偽物ってなんだ? ・  ・  ・  ・  ・ 5 ・  ・  ・
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偽物ってなんだ?
その5


天然で未加工なものが欲しい、加工が施されているなら、そのことについて知りたい。
そんな方の参考になれば幸いです。


水晶を「染め」るには

ここまで水晶の着色について話してきましたが、水晶を着色するには放射線や熱が使われます。
顕微鏡サイズの小さな結晶が集まったつぶつぶ構造である瑪瑙やカルセドニーと違って、大きく結晶している水晶には隙間がないため染料が染みこまず、染色できません。
染めの瑪瑙でも、大きく結晶した石英の部分には色が入っていないことからもわかりますね。
水晶を染料で染めるには、表面に塗るか、クラックをいれてそこに染料を染みこませます。
水晶は表面がつるつるなので、塗っただけのものは落ちやすく、クラックに染みこませたものは、その不自然さで容易に見分けがつきます。



写真のようなビーズのほかにも、カットされたルースで「ブルー・リキッド入り水晶」というのを見かけることがあります。
何でも「パライバ・トルマリンの産地パライバで採れる水晶で、青い液体内包物(リキッド)は、銅に由来するものと思われるが、鑑別に出しても不明だった……」とか説明されていたりします。
ところが、実は人工的に青い染料をしみこませたものだというからびっくり。
水晶を熱して染料に放り込んで急冷すると、あっという間に細かいクラックが入り、そこに染料が吸い込まれるのだそうです。

現地ブラジルでは「ファンシー・クォーツ」「加工品である」と明らかにして売っていますが、中にはクラックが入っているとわからなくて、液体が自然に内包されているように見えるものもあり、そういうものがカットされて売られていくうちに「天然」扱いされるというのです。
ベースはたしかに天然水晶かもしれませんが、「銅由来の内包物」「最近見つかったレアな天然石」などといって売ったのではインチキです。

表面着色には、アクアオーラがありますが、あれはコーティングする鉱物を高温に熱して蒸着させてあるので、しっかりくっついていて、ちょっとやそっとでは剥がれません。
このシリーズには虹光沢が顕著ではなく、天然物にもありそうな色合いのものがありますが、蒸着という手間をかけて作られているため、天然ですというよりも○○オーラと明記されて売られています。

アクセサリーやビーズでは、表面に色のコーティングを施したものもあるようですが、水につけたり、アルコールで拭くととすぐに色が落ちてわかるそうです。


「染め」という説明の落とし穴

お店の説明や、石についてのうわさで
「水晶を染めてある場合がある」 というような話を聞くことがあります。
それがお店の説明である場合、加工であることを申告してくれるのだから親切なお店だ……と思われるかもしれませんが、
ちょっと注意を
「水晶を染めてある場合がある」……この言葉は「加工だよ」という意味の他に、もう一つ、「染めてあるけれど水晶であることは間違いないよ」というイメージを与えます。

ここで思い出してください。
水晶を如何に染めるか? 水晶を染めることが意外に大変だということを。
ひびに染料を染みこませる。(←見るからにバレバレ)
すぐ落ち覚悟で表面に塗る。(←色落ち必至)

金属を蒸着。(←要するにアクアオーラ。手間も費用もかかる)

染めたといいながら、その「水晶」が見た目透明で綺麗に色づいていたら、それはガラスの可能性大
染めたのではなくて、溶かして色を混ぜて固めたのです。水晶を溶かしたらそれは水晶ではなくなり石英ガラスとなります。染めているとも言えません。
「染めた」という言葉に簡単に納得してしまうと危険です。

たとえば、天然の水晶で、このように透明で青いものはありません。

すると、このビーズは合成青水晶(人工的に結晶させた水晶)か、ガラス(結晶していない)ということになります。

ビーズで、とても安かった……というなら、ガラスの可能性が高いです。

加熱や放射線で変色させている場合もあるかもしれませんが、それを「染めた」とは言わないでしょう。
仮にそれを軽々しく「染めた」といい、ちゃんと説明できないようなら、お店の知識の程度を疑います。
加熱や放射線での変色は
◇アメシストを加熱→鮮やかなシトリン(色合いには幅がある)
◇ある種類のアメシストを放射線照射+加熱→グリーン・クォーツまたはグリーン・アメシスト
◇スモーキーを加熱→淡いめ、時に若干緑がかったシトリンっぽい色
◇透明水晶に放射線→スモーキーや黒水晶
◇ミルキークォーツの一種に放射線照射→黒→加熱→グリーン・ゴールド

程度で、透明青やエメラルドグリーン(モルダバイトのような濃い色)、透明赤などには変えられません。

また、放射線で処理したシトリンという説明を時々見かけます。
しかし、鉄イオンを含んだ石英が天然の放射線を浴びてアメジストになり、加熱でシトリンになる……という変化を考えると、補車線でシトリンという話はちょっと不思議。シトリンに放射線を当てたら理論上はアメジストになると思うんですが……。

そうそう、最近聞いた要注意物件があります。
シルキークォーツと呼ばれる、白い角閃石が内包された水晶がありますが、これを磨いて着色したものがあるというのです。
磨いてしまえば角閃石の「断面」ができるので、そこに染料を染みこませたのでしょうか。
クラックに染みこませたのと違って、かなり自然な仕上がりで、染めた色合いによっては、珍しい色合いの天然物にされてしまいそうです。
最近、その染めらしいという石を見ましたが、私には見分けがつきません。
微妙な染料だまりで見分けるのだそうですが……。

ピンク色に染められたタイガー・アイ。
タイガーアイも石英質の石ですが、内部にクロシドライトがぎっしり内包され、磨かれてその断面が表面に出ていることで、染料が染みこむすきまが生まれています。


石英でも内包物がある場合はそこを染めることができるようで、海外ではファントムをあり得ないような青やピンクに染めたものがあるそうです。


これは「染め」か、要注意か?

右写真のようなローズクォーツのビーズがあります。
最近(2010年10月現在)、某雑誌の付録のブレスがこういうビーズだったそうですが……。

これは染めなのか?

確かに赤っぽい染料のようなものが穴まわりに付いているし、クラックに染みこんでいるようでもあるし、よく見ると表面の細かな凹凸にも入り込んで、そのせいでつやが鈍く見えているようす。

とにもかくにも赤い色合いが添加されているんだから染めだ!……という意見もあります。なるほどですが……この石、染めなければならないほど元の色が薄かったとも思えないし、第一染めて綺麗になったとは言えない。

染めて綺麗になれば高く売れるけど、元の色からさほど改善たわけでもなく、出来上がりが綺麗でもないから高くは売れないものをわざわざ作るだろうか。

なんとなく、
加工が粗くてつや出し剤が残ってしまい、結果、「染め」といわれてしまった情けないビーズのような気がします。

こういうビーズが話題になると、「ローズクォーツには染めがある、注意」「ちゃんとした店で買った方がいい」という話になるんですが、その前にちょっと待った。

これをローズクォーツの染めというなら、結局染めてもこの程度の、綺麗でもなければちょっと見ればバレるような代物なのです。
それをことさらに「注意!」と言うまでもないかも。
ましてや、ショップが「ローズクォーツには染めたものがありますが、当店のビーズは加工されていません」などと宣伝に利用するとなれば、とほほです。

あんまり神経質にならず、冷静に。

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