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見て、比べて、考える。
その8
ルチル編


ルチル単結晶黒ルチルとショール赤ルチルと角閃石、ゲーサイト



まず。ルチル(金紅石)って知ってますか?
ルチルっていいですよね〜。タイチン・ルチル好きです〜。と言う声をよく聞きます。
ここでツッコミ。ルチルって綺麗ですか? 金色じゃないし、太くなればなるほど真っ黒けでごついんですけど。
これ、ホントです。
普通、ルチル、ルチルと言っているのは「ルチルという鉱物が中に入った水晶」のこと。ルチルという鉱物は単独ではこんな感じです。

これが、ルチル(金紅石)
柱面が白っぽく見えているのは、光を反射させると銀色の金属光沢で光るから。反射させないと右上の結晶の先端のようにほぼ真っ黒。
なのになぜ「金紅石」なのかといえば、光に透かすと、写真にもちらりと写っているように深い赤に透けるからです。

◇表面が金属光沢で鋭く輝く
◇光に透けると深い赤

……この2点は、ルチルを見分けるのに重要な手がかりになります。


ルチルが入っているからルチル入りでしょう!
最初にひとこと。最近「青いトルマリンの針状結晶が入ったものを、一般的に藍ルチルと呼びます」などという説明を見かけます。
ちょっと待て。
入っているのがトルマリンならば、ルチル入りじゃなくてトルマリン入りでしょう! 「一般的に」とは、どこの一般的ですか。どこの。
昨今の「天然石」の分野は、一見似ているもの、そうしておいた方が高く売れるからといって、ルチルではないものを平然とルチルと呼ぶような
実にいい加減な呼び方をして、同じようにいい加減な呼び方をしているところがたくさんあるから「一般的」と言っているような、
不可解きわまりない状態にあります。パワーストーンの本にも堂々とそう書かれているから、困ります。
ルチル入り水晶と言えば鉱物のルチルが内包されているもの。中に入っているのがトルマリン入りならトルマリン入り水晶
シンプルにして明快!
これこそ「常識」ではないでしょうか?


ルチル入り水晶=針入り水晶ではない
ルチルは多くが針状の結晶で内包されるので、その形状から針入り水晶と呼ばれます。
しかし、ルチルが入っているものすべてが針入り水晶ではありません。ルチル入りだけが針入り水晶と呼ばれるわけでもありません。
ルチル入りでも、エンジェルヘアーと呼ばれるような、しなやかで細いものは「針入り」とは言えないですし、ルチル以外の鉱物、たとえばトルマリンやアクチノライトでも、針状で内包されていれば針入り水晶です。
ルチル入りと言った場合は、中に入っている鉱物の名前。
針入りと言った場合は、中に入っている鉱物の形状による名前。
同じ「○○入り」でも、使い方が違うのです。


最近、針状の内包物の意味で「ルチル状」という表現を見かけますが、
これは
間違いのもとだと思います……。



黒ルチルとショール(黒トルマリン)とエジリン
黒ルチル
黒ルチルという鉱物があるのではなくて、水晶に内包されたルチルが黒く見えているもの。黒ルチルはすべてトルマリンと言われていたこともあったが、黒く見えるルチルもある。
内包されている様子、表面の金属光沢で区別する。写真では白く光を反射しているように見えているのが金属光沢。
太いものであれば強い光を当てると赤く透ける。赤く透けたら間違いなくルチル。

ショール入りと同じく、これを黒針入り水晶と呼ぶのは間違いではない。
針=針状の鉱物(ルチルもそれ以外も含む)
ブラック・トルマリン(ショール)
黒ルチルと間違われるのが、ショール(黒トルマリン)の針状結晶。黒ルチル入りと呼ばれているビーズなどの多くがショール。
ただし、これを黒針石水晶と呼ぶのは間違っていない(針入りとは、針状の鉱物が入っているという意味だから)
ルチルに比べて太めのものが多く、結晶の長さは短め。内包の様子も写真のようにごちゃごちゃとしていることが多い。
太さの異なる結晶が混ざっているのも特徴。
ルチルのような金属光沢に乏しく、強い光を当てても赤く透けない。
エジリン(錐輝石)
黒いルチルと呼ばれる石に新たな種類が登場。……というか、ショール入りに似ているかも。
ショールではなくてエジリンです。
写真の石はパキスタン産で、黒く太い針状結晶がざくざくぎっしり。
一見するとショール入り水晶なんですが、ちょっとショールとはようすが違う……と思っていたら、エジリン(もしかしたらエピドート)とのこと。


トルマリンは断面が丸っこい三角形だが、エジリンは薄っぺらな感じがする。
黒ルチル(メタリック)
最初は、トルマリン入りと思いこんでいた水晶。
しかし、放射状に生えているようす、しなやかに曲がっているものがあること、金属光沢が強いことから、疑問を持ち、しつこく光に透かしてみていたら、赤く透けることを発見。ルチルであると判断しました。
ブラック・トルマリン(ショール)
インドのトルマリン入り。太くても不透明真っ黒、全体的に短い針状が多い、太いものと細いものがごちゃごちゃ……これらは、トルマリン入りの特徴であると思っています。
エジリン(錐輝石)
上の石の拡大。写真ではよくわからないが実物を見ると違いがわかる。
「ショールやルチルと言われているものには意外にエジリンが多い」と聞いて
ぎくっ!
まだまだ見分けは難しいです。

これらのほかに、黒い針状の内包物として考えられるものはスティーブナイト(輝安鉱)、プラットナーアイト(ルチルのチタンが鉛に変わったような鉱物)、黒く見えているアクチノライトやエピドートなど、いろいろありますが、見分けはなかなか……。



赤ルチルとアンフィボール(角閃石)、ゲーサイト(針鉄鉱)
赤ルチル
赤ルチルというルチルの種類があるのではなくて……(以下略)。
赤ルチルといった場合は、もっと太くて褐色のものを指す場合が多いが、こんなに細くてふんわりしたものもある。
しなやかで、太さに差がなく、光を反射する金属光沢がある。
赤ルチル
「赤ルチル」としてよく見かけるのがこのタイプ。
太さがあり、見かけは赤と言うより茶色。しかし光に透かすと、ルチル本来の赤がよみがえる。
赤(銀?)ルチル
全体で見ると赤っぽいが、アップで見ると表面の銀色光沢が強い。
これを見ると、ルチルの金属光沢がよくわかる。シルバー・ルチルと呼ばれるものは、細いから銀色に見えているのであって、太くなれば多分赤い。
赤ルチル
これは水晶の表面に貼り付いてるもの。内包されたもので、これだけ真っ赤なものはほとんどないのは不思議。三角形の籠目のような並び方はルチルの特徴でもある。
赤ルチル
赤といえば赤、もしくはあずき色。
一本一本が輝き、何となくキャッツアイのような光の筋が見える。
赤ルチル
太い赤ルチルを光に透かしてみると。なるほど金紅石。赤いです。
赤ルチル
磨きのポイントの中に赤いルチルがふっさふさ♪ こんなに赤いのに、角度によってルチルらしい金属光沢を見せる。
赤?ルチル
赤っぽいと言えば赤っぽい。茶色と言えばそんな感じ。強いて言うなら「毛皮色」? 丸玉の中にぎっしり。
赤(銅)ルチル
ビーズの中に、輝きの強い赤系ルチル。金ルチル、銀ルチルに続いてコッパー(銅)ルチルと呼ばれることもある。もちろん、色が「銅」であって、成分としては二酸化チタン。
赤ルチル
華やかに赤いルチルが磨きの結晶面から吹き出すような形で内包されている。写真で白く色変わりしているのは、ルチルの金属光沢で光を反射しているため
赤ルチル
白いファントムと一緒に赤ルチル。
よく見ると、ルチルはファントムとは無関係に内包されているようす。
赤(セピアピンク)
赤と言うより、リチウムのセピアピンク色。ルチルが透けて赤が見えているせいなのか、リチウムが関係しているのか。
ルチルではないもの
角閃石(アンフィボール)
よく似たものということで並べてみたアンフィボール(角閃石)。酸化鉄の影響で赤くなったものが内包されると、赤ルチルそっくりに見える。
ただし、しなやかさに欠ける質感で、写真のようにごちゃごちゃはいることも多く、太さもバラバラであるのが特徴。金属光沢もない。

(中で黄色く光って見えるのは、ビーズの穴の部分です)
角閃石(アンフィボール)
こちらも赤みを帯びたアンフィボールだが、ルチルの赤とはやや色味が異なる。
一見しなやかに見えているが、全体像で見ると、フェルトっぽく絡まったような質感をしている。
やはり内包具合の差に注意。

一色ではなくて白っぽい色やオレンジなどが混ざっていることも多い。
角閃石(アンフィボール)
赤い水晶の中に見える繊維状の内包物。これもルチルではなくて角閃石だという。
これをルチルだと紹介している例は見たことがないが、知らなければルチルと言ってしまうかもしれない。
ゲーサイト(ストロベリー・クォーツ)
某パワーストーン本でストロベリー・クォーツの内包物はルチルと書かれていてびっくり。個人的には似ていないと思うけど、やっぱり間違えるかもしれないと思うので比較写真。ルチルもゲーサイトも、どちらも細くて、角度によってはきらきらするところが似ています。
しかし、ルチルは太さが一定でしなやか、ゲーサイトは微妙によじれたようだったり、真ん中・左の写真でわずかに写っているように、一本の端と端で太さが異なるものがあるのが特徴。
ルチルに比べて結晶の長さが短いものも多い様子。なかなかきれいに写せませんが、微妙なよじれ具合、太さの違いをご覧ください。

ちなみに、ルチルは酸化チタン、ゲーサイトは酸化鉄なので、全く別の鉱物です。念のため。
明らかにルチルで赤く見える水晶を、ストロベリーと呼ぶのは、実は聞いたことがありません。

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おまけ話

「人工ルチル」はあるか?
「ルチルが人気なので、中国で偽物の人工ルチルが作られているそうだ」……という噂があります。
火のないところに煙は立たぬといいますが、この煙の元に火はあるのでしょうか?

このについて考えるにあたっては、言葉に気をつけながら考えなくてはなりません。
判断を急ぐと、落とし穴にはまります。

まず、人工ルチル
ルチルを人工的に作ったもの。実は、あります。ルチルという鉱物ならば、合成できるからです。
ルチル単体ならば合成可能。これは事実です。

しかし、ここで話題にしているルチルとはもちろん「ルチル入り水晶」のこと。
石好きさんにとっては改めて言うまでもないことですが、石に興味のない人を含む世間一般常識ではありません。「ルチル=ルチル入り水晶という話だよね?」と確認しないまま
「ルチル? (単体の)ルチルなら人工的に作れるよ」という話をあわてて理解すると……危険です。

では、以下は「ルチル=ルチル入り水晶」、この際色は問いませんがあの細い針のようなものが中に入っているものという認識で。

「ルチル(入り水晶が)人工的に作られてるんだって」「練りのルチルがあるんだって」……いろいろ噂がありますが、では、このおそれられる人工ルチル、実際どんなものが考えられるでしょうか?

(1)合成水晶(結晶している)を作るときにルチルを入れた
(2)練り水晶(ガラス)にルチルを入れた
(3)天然水晶・ガラスに後からルチルを入れた
(4)透明ガラスや水晶の間に細い針金を挟んだ

ちょっとそれらしく説明されているものをあつめると、こんな感じでしょうか。
これで「そうなんだ〜」と納得するのは拙速です。あわてない、あわてない。
本当に実現可能なのか? そこがまず問題です。

私は専門家ではありませんが、専門家でなくても考えられます。
まず(1)〜(3)を実行しようとすれば、本物そっくりのルチルが必要です。
先ほどルチルは合成できると言いましたが、繊維状に合成するのはちょっと無理そうです。できたとしても、それ専用に細く合成するのですから、コストがかかるでしょう。
じゃあ、針金で。
針金で、本物のルチルと間違うくらい細いものを見たことありますか? 本物に間違うようなのを作ろうとすれば、金色で細くて、あるいは微妙に太さの違うものをそろえなければなりません。
針金じゃなくて繊維だったら、ガラスが溶ける温度に耐えなくてはならないわけで……すごく難しそうです。
「金の細い針金を……」という話も耳に挟みましたが、コストはどうなりますか。

まあ、中に入れるルチルあるいはルチルのようなものが何とかなったとしましょう。
さあ、それをどうやって合成水晶やガラスに入れましょうか。
合成水晶はオートクレープという容器の中で作ります。
その中に細い種となる水晶をつるし、水晶の原料がとけ込んだ溶液で満たし、高温高圧をかけて作るわけです。(参考サイト

その上、できあがった合成水晶は、天然水晶とまるで形が違います。
形は削って丸玉でもビーズでもできますが……



右端のU字の針金から左へ伸びるうっすらした線が種となった水晶
この溶液にルチルを溶かしておいたら針状ルチル入り水晶がハイできあがり、というかんたんなものではありません。

天然のルチル入り水晶をよく観察すると、ルチルの方が先に結晶して、後から水晶がそれを包み込んだのだと言うことがわかります。つまり、ルチルの方が高い温度で結晶するのです。
合成水晶は水晶を成長させるためのもの。温度も当然水晶仕様。
じゃあ特別に……コストかかりすぎです。

ルチル以外の針状のものを使うんだ!
それをどうやって本物っぽく合成水晶に入れましょうか。天然の環境をまねてルチルもどきをオートクレープ内に張り巡らす? 本物そっくりの並び方や密度で?……無理でしょう。

ルチルなら無理だけど、他の鉱物を混ぜて合成できるんじゃないか。
どうも、混ざりもののある、合成水晶としては失敗作の水晶を作るのは、逆に大変難しいらしいです。

ガラスに混ぜるにしても……溶けたどろどろガラスを見たことがありますよね? あの中に針のように細いルチルかルチルのようなものをまっすぐ、本物っぽく入れられますか?
※だから、偽物ルチル入り水晶はグニャグニャしているそうだ……と言われているらしいです。でも、天然ルチルでも曲がってるのありますよ?(こちらとかこちら……もちろん、ほんもののルチル入り水晶)

天然水晶やガラスに後から入れるなら、細ーい穴を開けて糸のようなルチルを入れる作業をどれだけ繰り返さなければならないのでしょう? あんな細い穴を開けて糸よりも細いルチルを入れて、抜けないようにどうにかして留める……すごい手間。不可能です。
それで本物と間違うようなものができるでしょうか。

その点上記の(4)は、施設も必要ないし、挟むだけですから、中にどうやって入れるかという問題もなさそうです。
……でも。
そんなに細い針金だろうと、挟むのが硬いものですから隙間ができます。
隙間を接着剤で埋めたら、透明なところなので、見たらすぐばれるでしょう。
挟む方法では、平面的にしか入れられませんから、本物っぽく見せられそうにありません。
中に入れる「ルチルっぽいもの」の調達問題(光沢や微妙な太さ)も残ってます。
つまり、これも実現度は低そうです。

そもそも、なぜ偽物を作るか。……ルチルが高く売れるから?
高いと言ったってダイヤやルビーなどの宝石ほどではありません。
それに人工ルチル(入り水晶)をつくるというなら、できたものが天然のルチル(入り水晶)の原価よりも安くなければ、割に合いません。安く作って本物と同じか安く売っても儲かる。最低限元が取れる。
そのうえ専門家はだませなくても、素人ならだまされる程度に似ていなければなりません。

しかし、考えられる「人工ルチル(入り水晶)はどれも安くできそうにないし、できたとしても本物だと騙されそうには思えません。偽物失格です。
手間暇かけて、あるいは大がかりな装置を作ってできたものが本物ルチルに似ていない(たぶん)。それでは作るだけムダというものです。

以上のようなわけで、私は一から人工的に作ったルチル入り水晶はないと思ってます。
いや、あるんだというなら、画像が見たい。本物と間違えるくらい精巧なものなら一つ欲しいです!
オークションで出回っているんだって……見かけた方、ぜひ連絡ください。
本気でひと目みたいです。でも、本物と間違うできじゃないと納得しませんよ〜!

このほかに、わかったらがっかりする「ルチル(入り水晶)」があるとしたら。

(5)張り合わせ(ルチル入り水晶に透明水晶やガラスを貼り合わせてボリュームアップしたもの
(6)ルチルではない他の鉱物が入った水晶

これはあります。
しかし(5)では加工されてはいますが、ルチル部分は本物なので「人工」とは言えません。
(6)についてはそもそもトルマリン入りやアクチノライト入りをブラックルチルや藍ルチル、グリーンルチルと呼んでいるのですから、今さら何を言うやら。(私はルチル以外のものが入っているのをルチル入り水晶と呼ぶのはおかしいと思っています)

もっともらしい説明がくっついた偽物情報がありますが、ちょっと考えるとおかしいです。

追記:実は……聞いた話ではありますが、中国などでは、トルマリンや別の水晶のポイントなどを水晶中に入れる技術はあるのだそうです。髪の毛のような細いルチルは無理でも、ある程度の大きさのものなら、削って穴を開けて入れてしまうのだそうです(クラスターでも入れるとか!)
かなり精巧な出来だそうですが、入れた後の穴が粘土のようなものでふさいであったり、エポキシ系の接着剤を使うため、紫外線で蛍光するので判別できるそうです。
また、それなりの手間賃がかかるとも言われます。
国内に入ってきているという噂はまだ耳にしません。今のところは、もしかしたらあるかもと心配する段階ではないように思われます。


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