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見て、比べて、考える。
その15
勘違いでそっくりさんになった石。

どちらの名前も間違ってはいなかった。
なのに、説明を付けたら間違い発生。
そんな石もあるんです。


 トパーズと黄玉   トパーズとシトリントパーズ   翡翠とフォールス・ネーム 


トパーズと黄玉
ご存じ、トパーズの和名は「黄玉」。だったら「黄玉」という石ならばトパーズだろう。
そこではまった怖い罠
トパーズ
実はクリアなものが多くて、青やピンクもあったりするけれど、トパーズといえば写真のような黄色い色が有名で、和名もずばり「黄玉」
たぶん、この場合の玉「(ぎょく)は「宝石」の意味で、「黄色い宝石の代表格」。
天然石セットに「黄玉」という名前で入っていた黄色い石。重さも、手触りもトパーズではない。
おそらく「黄色い玉(ぎょく)」という意味合いで付けられた中国名だろう。
古来、中国ではとろりとしたやわらかな艶を持つ半透明の石を「玉(ぎょく)」と呼んで愛でてきました。現在の鉱物の分け方(成分や結晶系)ではなくて、あくまでも見て美しいと思うものを「玉」としたのです。そのため、複数の鉱物が「玉」と呼ばれているし、玉と呼ばれたのと同じ鉱物でも、見かけが異なれば玉とは呼ばれないということになります。

今現在、宝石といえばダイアモンドやルビーなど、色鮮やかでキラキラした石ですが、古代中国では「半透明でとろりとした艶の玉」こそが美しく価値のある石で、玉とは宝石の意味だったのです。
「宝石」「「美しい石」「価値のあるもの」そのような意味を込めて鉱物名のトパーズに「黄玉」の和名が付けられたのではないでしょうか。

ところが「和名」は日本での名前。お隣中国では、「Topaz」はともかく「黄玉」という和名など関係ありません。しかも、「玉」の本家なのです。
伝統の「玉」の基準に従って、「黄色い玉=黄玉」。この場合の玉はもちろん「半透明でとろりとした艶の石」です。(※写真の石は、玉としてのグレードは低いと思います)
日本と中国、それぞれの思惑で付けられた名前が、奇しくも同じ「黄玉」だった。
しかも中国の「黄玉」がそのままの名前で日本に入ってきた。ここで、「黄玉」と「黄玉」、一つの名前で二つの石。
それを知らないお店は、仕入れた石に説明を付けようと「黄玉」で検索。もちろん日本語。すると出てくるのは「黄玉=トパーズ」。
「そうかそうか、トパーズか」
こうして違う石にトパーズの説明が付けられて、間違い発生。
トパーズがどういう石かを知っていたら(見かけの割に重い)、「黄玉と名前が付いているけど、違うんじゃないか?」……と名前だけで判断するのではなくて、石そのものを見て、ちょっとはおかしいと思っていただきたいものです。


同じように、説明で間違いが発生する石に「レモン・クォーツ」があります。レモン・クォーツは本来イオウが内包されてレモンイエローになった水晶のこと。しかし、最近はスモーキー・クォーツを加熱してレモンイエローに変色させたものも「レモン・クォーツ」と呼んでしまっています。
見た目レモンイエローなので間違いとは言えないけれど、ややこしい。
しかもスモーキー加熱のレモン・クォーツを仕入れた石屋さんが、「レモンクォーツか……説明を付けなきゃ」とまじめに調べると、検索で出てくるのはイオウ入りレモン・クォーツ。
かくしてスモーキー加熱の、イオウの入っていない石に「イオウ入り」の説明がくっつくことになるのです。はぁ……(溜息)



勘違いすると、ヤバいです
フォールス・ネーム

トパーズ(黄色)とシトリンは、色合いが似ているものがあります。宝石的価値はもちろんトパーズの方が上。
そのため「色はトパーズそっくりよ」「トパーズっぽいでしょ」といいたいのか「あわよくば間違えて買って欲しい」なのか、
とにかく
「(宝石的)価値が高い方のお名前拝借ネーミング」があります。
これを「フォールス・ネーム」といいます。

知らないと勘違いしてしまうので、ご注意を。ここではよく見かける例を写真付きでご紹介。
いろいろなフォールス・ネームはこちら


トパーズとシトリン・トパーズ(水晶)
ページはじめでトパーズがでたので、ここでもトパーズ。
トパーズでも人気の色合いの、オレンジがかった華やかな黄色が魅力のインペリアル・トパーズ(左)と
アメジストを加熱することで黄色く変色させたシトリン。
なるほど、色が似ています。
パワーストーンや鉱物標本では「シトリン・トパーズの名前は見かけませんが、
ジュエリー・アクセサリーの分野では未だにあるかも。
実は、トパーズは成分によってOHタイプとFタイプの2種類に分けられています。
インペリアル・トパーズの規定にも色だけで分けるという説と、色と成分によって分けるという説があって混乱しているそうです。
アメジストを加熱したシトリンと書いたのは、天然のシトリンはもっと渋い色合いが多いから。
ただし、アメジストを加熱してもすべてが同じ色合いになるとは限らない。


次に翡翠
翡翠というと、「宝石」のイメージが浮かびませんか?
古代日本でも珍重された宝石ではあるのですが、現在ではちょっと複雑です。

翡翠にはジェダイトネフライトがあります。2種類の石がまとめて「翡翠」と呼ばれているのです。
このうち、現在の「宝石」としての価値が高いのがジェダイトの方。
しかし、ジェダイトにもきれいなもの、そうでないものがあって、宝石扱いされるのは「きれいなジェダイト」です。

この2種類の石は、鉱物としても種類が違います。硬さにも差があることから
ジェダイトは硬玉、ネフライトは軟玉と呼ばれています。
名前が似ているので、翡翠(ジェイド)=ジェダイト(硬玉)だと勘違いすると、ちょっと違います。

ジェダイト(硬玉)
ひすい輝石を90%以上含む岩石のこと。純粋なものは白。
微量の鉄やクロム、あるいはオンファス輝石という成分は似ているが違う種類に分けられている鉱物が含まれて緑に見えている。
微量の鉄やチタンによって紫色になる。ひすいといえば硬玉を指すことが多く、本ひすい、インペリアル・ジェードと呼ばれることもある。
翡翠と言えば、緑というイメージが強いのでは?
透明度があり、明るさと深さを兼ね備えた緑の翡翠を
琅かん(ろうかん)といいます。
写真の石は緑ではあるけれど、もちろん琅かんではありません。
「インペリアル・ジェイド」の名前で売られていました。
チタンと鉄によって淡い紫色になったジェダイト。
チタンによって青くなったものもあるといいます。

緑などと混ざったものも見かけます。
翡翠の翡は赤色、翠は緑色を意味し、本来、赤い色合いと緑の色合いが混じったものを言うのだ……という説を聞いたことがありますが……。
写真のビーズは、「翡翠のの部分だよ」といわれたもの。翡翠の塊の表層部分は赤み(茶色)を帯びていることがあります。
翡翠にも染色があります。またワックスを大量に染みこませ、透明度を補う処理もあるようです。
白地に部分的に緑が混ざった「翡翠」といって売られている石の中にはカルサイトもあるそうで……。なんとか「これはジェダイト」と信用できる石を買い、石の質感をじっくり覚えた方がいいかも。

ネフライト(軟玉)
角閃石(透閃石〜鉄緑閃石)を主成分とする岩石でジェダイトよりも柔らかいために軟玉の名前がある。

混ざってる……? ちょっと微妙です。
翡翠には入れられないけれど、翡翠が混じっているとか、よく似ているとか、
ちょっと理由があるので、「翡翠の一種です」と説明されて混乱してしまう石たち。
レムリアン・ジェイド
ジェダイト、ネフライト、チャルコパイライト、パイライト、カルサイト、クォーツが混じっているらしい。ペルー産
名前はジェイドですが。ジェダイトやネフライトも混ざっているそうですが。
翡翠とは言えないような……?
マウシッシ(コスモクロア)
発見された当初「翡翠と長石の共生」という結果が出たことから「翡翠の一種」と説明されていたが、現在は、ユーレアイトを主成分とし、他に、角閃石・緑泥石・長石が混ざった岩石とされている(1981年・GIA)。ユーレアイトはひすい輝石のアルミニウムの大半がクロムに変わったもの。
残念ながら翡翠としては扱われない。
日高翡翠
1966年に北海道日高町で発見されたクロム透輝石。発見当初「翡翠」とされたが、翡翠とは扱われない。
しかし「日本宝石学会が「日高翡翠」の宝石名で公表し 国際的に認定され「第3のひすい」とされている」という説明もある。
微妙だ……。

お名前拝借フォールスネーム石
こちらは、翡翠とは縁もゆかりもない、赤の他人石。たまたま見た目(だけ)が翡翠に似て見えなくもないというだけ。
「これはインド翡翠という名前の(翡翠とは別の)石」とわかったうえで、その石の美しさを楽しむには問題ありませんが、
「○○翡翠」と言うからには翡翠で、宝石的価値がある!……と勘違いなさらぬよう。
ここに挙げた石は、「お名前拝借」であることがある意味有名なので、いちいち「宝石の翡翠とは別です」と説明されない場合もあります。
インド翡翠(アベンチュリン/クォーツァイト
よく見かける名前と石。石としては水晶(石英)の仲間といえば仲間。クロム雲母を吹くんで緑色なので、翡翠の名前があるが、もちろん翡翠ではない。
ニュージェイド(サーペンティンの一種)
もっと緑のものもある。
「ニュージェイドは翡翠だ!」と強弁するショップさんもあるそうで。
もちろん、翡翠ではありません。
トランスバール翡翠(ハイドログロッシュラー)
なんとこれはガーネットの一種。もっと緑が濃いものもある。
同じくトランスバール翡翠と呼ばれる別の石もあり、さらにややこしいことになっている。
翡翠のフォールス・ネームを持つ石はたくさんあります。
上に上げた石でも、もっと翡翠に見える色合いのものがあります。

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