ブラジル産 カルサイト

生命の星への軌跡




 意外な少数派

今回の石はカルサイトです。……と言っておきながら、我が家におけるカルサイトの勢力は大変弱いです。
水晶などと共生しているものを含めればもう少しましかもしれませんが、「カルサイト」として買った物は、おそらく片手ほど。結晶の形は水晶以上に個性豊かで色彩も豊か。なのに、なぜ縁が薄いかと言えば、それは「柔らかさ」のためかもしれません。
硬度3という、物理的な柔らかさもありますが、その見た目の形や輝きも、「やさしさ」に通じる柔らかさがあります。仮にワイルドな色形であったとしても、さわれば柔らかさと水晶とは違うあたたかさを感じるような気がします。
このカルサイトは、我が家の数少ないカルサイトです。
犬牙状……と言うのでしょうか。とげとげと大変鋭く、取り扱い要注意な石ですが、それでも水晶とは違うみずみずしい雰囲気を持っています。
母岩の緑もあいまって(セラドナイトだったかな?)、植物的な印象も受けます。

 
二酸化炭素とカルサイト

カルサイトについて調べてみると、「柔らかさ」「みずみずしさ」という印象が、的はずれではないような気がしてきました。
カルサイトの和名はご存じ方解石。
アラゴナイト(霰石)とは、成分は同じで結晶系が違う同質異像の鉱物です。それよりも、石灰岩や大理石の成分もカルサイトだと言われれば、なんだか一気に身近に感じてしまいます。
そればかりではありません。
海の珊瑚の骨格を作っているのも石灰石……つまりはカルサイトの成分で、秋芳洞などで知られる鍾乳洞も石灰岩ですから、カルサイトがかかわっています。
現在、石灰岩は各地で見られますが、これらはその昔、地球の大気に多く含まれていた二酸化炭素が海中にとけ込み、カルシウムと結びついて形成されたものだそうです。
地球温暖化防止のために二酸化炭素の排出を減らす取り組みが行われていることからもわかるように、二酸化炭素は温室効果を持った気体です。
つまり、太古の地球の大気から石灰岩の形成メカニズムによって二酸化炭素が取り除かれ少なくなったことで地球の大気の温度は下がり、今のように生命が生きてゆける穏やかな環境になったと言えます。
カルサイトはさまざまな条件下で生成され、世界中に広く存在します。トン単位の結晶も採掘されるといいますから、太古の地球の二酸化炭素は、ものすごく多かったのでしょう。
もし、地表部のカルサイトが何らかの原因ですべて分解してしまうと、地球の気圧は現在の約90倍になり、二酸化炭素の温室効果によって気温は上がり、海は蒸発して地球は金星のような灼熱地獄となってしまうと考えられています。
カルサイトの形成によって大気中の二酸化炭素が少なくなり、 その結果として地球の温度は下がり、水蒸気は凝結して雨となり、海を作り、命が生まれた……。
カルサイトは
地球の命の歴史の「影」なのかもしれません。

(2004年12月11日、ブログ掲載)

 

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