モロッコ産 アズライト・マラカイト付き水晶

人と大地の歴史を刻む





 石を飾らない石好き

私は、石好きの割に部屋に飾ると言うことがなくて、石はもっぱら箱の中。(掃除が大変、小さい石が多くてなくしそう、数がシャレにならない……など理由は多数)
窓辺で石を撮影するとなると、えんやこらさと運び出します。
今日は石を撮るぞと気合いを入れる日には、全部の石を並べちゃったりするので、「おや、こんな石もあったっけ」ということは意外に少ないのですが、「壊れ物注意」につき、厳重保管の石は「おお、久しぶりだねえ……」なんてこともあります。

 
ローマ人の坑道から

今回は、そんなお久しぶりの石をご紹介します。
モロッコ産で、お店で聞いたところによると、ローマ時代に採掘していた銅鉱山の坑道の壁面にあった水晶だそうです。

それを裏付けるかのように、アズライトと、裏側にほんのちょっぴりマラカイトがくっついています。
複雑な形といい、マラカイトのくっつき具合といい、なんとも危なっかしい石なので、普段は柔らかい紙でぐるぐる巻きにして箱の中。
そうそう気軽にいじり回せません。見た目はこんなにごついんですけどねえ……。

写真は、右が全体像、のこりが部分の拡大になります。
水晶そのものは白いのですが、根本の方に酸化鉄や赤土のようなものが付着し、そのうえに鮮やかなアズライトが乗っています。
そして私のカメラではこの酸化鉄系赤が鮮やかめに出る傾向があってなんだかとってもおハデな写真に……。実物は、もうちょっと上品です。


 形のイメージ

しかし、形は上品というより
ワイルドでしょう。
小さな結晶がよりあつまって複雑な形を作るこのクラスターは、ある人は
「箱庭」のようだといい、私は最初「島」だと思いました。

そして、写真を撮ったあとの私の感想は……「白龍だ!」

赤い大地の中から、身を躍らせる白い龍!
見れば見るほど、そんな躍動感を感じるのです。


 第2の伏兵・モロッコ

この水晶のふるさと、モロッコは、マダガスカルに次いでひそかにその数を増やしている産地。
水晶よりもフローライト、アズライトが多いでしょうか。
「密かに数を増やす」という共通点を持つマダガスカルとモロッコ。石の視点で見ていくと、なにか共通点があるのでしょうか?

まず、モロッコのアウトラインをまとめてみます。
モロッコは、ご存じ、北アフリカ大陸に位置する国。(……と書いてはいますが、実は、とっさに出てこなかったりします)
北アフリカは、アラビア語で「太陽が沈む場所」を意味する「マグレブ」と呼ばれているそうですが、モロッコは、そのマグレブの中でも最も西、イスラム圏の西の端にある王国です。
面積は日本の約1.9倍。緯度は九州と同じくらい。

アフリカ最古の石器が発見されるなど、古くから人の痕跡が残されている地でもあり、紀元前4世紀ごろからローマ人が沿岸に小さな街を作り始め、紀元前25年頃にはローマ帝国に支配されるようになり、7世紀ごろには東から勢力を伸ばしてきたアラブ人によって、国すべてがイスラム化してしまうようになります。
その後、イスラム王朝やベルベル王朝が興亡を繰り返し、17世紀に現王朝であるアラウィー朝の基礎が築かれますが、20世紀にはフランスの植民地となり、1956年に独立、現在のような王国となったのです。

 モロッコはホットかコールドか

このように、人類がこの地に残した歴史だけでも古く複雑なものですが、この大地の歴史はどうかと言えば、マダガスカルのように大陸から分裂したわけでも、インドのように別の大陸がくっついたわけでもないようです。
しかし、何となく「サハラ砂漠の国」というイメージがあるモロッコには、総延長2400kmに及ぶアトラス山脈という山脈があります。(最高峰はツブカル山・4167m)
この山脈はアルプス山脈につながるものであると言われ、今から6000万年前のアルプス・ヒマラヤ造山運動によって、誕生したのです。

いろいろなサイトを見ていくと、このアトラス山脈からは、アンモナイトの化石や水晶が採れるそうです。(モロッコ産のアメシスト、見てみたい!)
……ということは、モロッコの水晶は、ヒマラヤ山脈、アルプス山脈と同じ、いわゆる「スーパーコールドプルーム由来の水晶と言うことになるのでしょうか。
でも、この形状といい、土っぽい雰囲気といい、どちらかというと、南アフリカやマダガスカルに似た雰囲気です。
やはり、スーパーコールドプルーム由来だの、スーパーホットプルーム由来だのという分け方は無理か……と、ため息をつきつつなおも調べていくと、ひとすじの光明が!

マダガスカルが誕生したのと同じパンゲア大陸分裂の時、当時くっついていたアフリカと北アメリカの間に小規模ではありますが、スパーホットプルームが上昇したことを示す図を見つけたのです。
正確には、北アフリカのモロッコの部分と言うよりは、海なのですが……。
アトラス山脈がかつて海底だったことを考えると希望は持てそうです。

アトラス山脈の成り立ちを見るなら、この水晶はスーパーコールドプルーム系です。
しかし、私はあえてこの石はスーパーホットプルーム系の石だと思いたい!
パンゲア大陸分裂の時の地殻変動によって誕生し、のちにアトラス山脈形成に飲み込まれたのだと思うのです。
水晶のまわりに鉄分や銅由来のアズライトが付着しているのは、水晶が含まれた地層がアルプス造山運動の地殻変動に巻き込まれ、新たなマグマが上昇してきて、そこに鉄の鉱脈を形成したためだ……。この考えはあまりにも無理があるでしょうか?


(2004年9月1日、ブログ掲載)


 
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