ユタ州産 モキ・マーブル(シャーマン・ストーン)

火星の海の幻想





 火星着陸1周年

タイトルの通り、ネタは火星。
実は、2005年1月4日は火星に小型火星面車(ローバー)が着陸して1周年にあたります。
最初は3ヶ月の運用予定だったローバーの一号機「スピリット」は、予定を遙かに超えて今も火星の調査を続けています。
このローバーには、約20日遅れで「スピリット」とは反対側に着陸した2号機「オポチュニティ」があり、火星に水が存在した証拠と思われるものを次々発見して話題になりました。

その証拠とされるもののひとつである
「ブルーベリー」をおぼえておいででしょうか。
NASAの人たちは、食いしん坊なのか、それともたまたまおなかがすいていたのか、ローバーの調査対象となる石や岩に「スシ」だの「サシミ」だのという食べ物の名前を付けています。(食べ物でないのもありますが)
そんな食べ物ネーミングの第3弾が「ブルーベリー」です。
これは、直径数ミリ程度の丸い感じのつぶつぶで、まわりのオレンジ色がかった砂岩よりも灰色がかっています。

「水に流されて角が取れて丸くなったものかもしれない」
「火山活動で飛び散ったものがかたまったものかもしれない」
……など、さまざまな説が飛び交う中で、
「これと同じようなものが地球にある!」
と身を乗り出した学者がいました。
その学者たちの脳裏に浮かんだもの……それが
Moqui marbles(モキ・マーブル)です。


 ヘマタイトの丸い形

モキ・マーブルというより、シャーマン・ストーンと言った方が通りがいいかもしれません。サンダー・ストーンと呼ばれることもあるようです。
採掘される地層の年代から、2億2千万年以上古いものだとする説もありますが、私はこの数値についてはどうかなと思っています。(理由は後述します)
ネイティブ・アメリカンやアステカ族などが呪術的な目的で用いたと言われています。
天然の状態で丸いその形が人々に神秘性を感じさせたのかもしれません。

……で、この石の正体が何かというと、ヘマタイトなのです。
もうちょっとくわしく言うと、砂岩のまわりをヘマタイトがぐるりと覆っているもので、私が見た写真では、ちょうどゆで卵の黄身の部分が砂岩、白身の部分がヘマタイト、という感じでした。
写真のモキ・マーブルは2004年の池袋ショーで手に入れたもので、お店の人に火星の「ブルーベリー」との関係があることを教えていただきました。


 水の証言者

モキ・マーブルは1ミリ程度のものから20センチのビックサイズまでさまざまな大きさがあります。
お店で見かけるのはころんと丸いものが多いですが、中には2つ3つがくっつき合った「だんご三兄弟」なものあります。
「ブルーベリー」にも「だんご三兄弟」なものがあるようです。
ただし、地球産のモキ・マーブルの鉄の含有量が数パーセントから30パーセントほどなのに対し、「ブルーベリー」はほぼ純粋な酸化鉄である点が異なっています。

ところで、このヘマタイトの存在が、火星に水があったことの証拠のひとつといわれているのだそうです。
オポチュニティが着陸したメリディアニ高原は、以前の調査からヘマタイトが多い場所であることがわかっていて、ヘマタイトが水のある場所でできることが多いので、この場所にはかつて水があったのではないかと考えられてきました。

それが、今回「ブルーベリー」が発見されたことにより、水の存在の可能性がさらに高まったのだそうです。
というのも、地球上のヘマタイトは水のそばのほかにも火山噴火によっても形成されますが、火山の噴火で形成された場合には、同心円の模様が現れるのだとか。
しかし、「ブルーベリー」には(写真で見る限り)、同心円の模様が現れていません。
また、地球の「モキ・マーブル」が地下水によって作られたことがわかっているため、「ブルーベリー」の形成にも水が深く関わっていると考えられるのです。


 丸い形の生まれ方

モキ・マーブルがどのように作られたのかについて、調べてみました。
この自然球体が発見されるユタ州の砂漠(ナバホ砂岩)は、約2億年前のジュラ紀から今に至る砂漠の残留物が石化したものです。
砂岩のもとになった砂は、現在オーストラリアの砂丘で見られるように鉄分でコーティングされてオレンジ色をしていました。
砂が石化し砂岩になったあと、水が何層にも流れ、砂岩を洗浄し、そこから酸化鉄をはぎ取っていきました。そうやって水に流された鉄がモキ・マーブルを形成したのだというのです。
同じ水でも海の底や湖では層状に堆積するだけですが、このように丸くなるのは地下水の作用によるものだとする説もありました。
(☆)つまり、酸化鉄を含んだ砂岩の中を水が流れることで鉄分が凝縮され、地下水脈の中でころころ流されていた砂岩のかけらのまわりにくっついていった……ということなのでしょうか。(※☆印から以降は私の想像です。)

前述した、モキ・マーブルが2億年以上の年月を経た古いものだとする説に頷けない理由はここです。
たしかに地層はジュラ紀のものかもしれませんが、モキ・マーブルそのものは砂漠が石化して以降に形成されたのですから、もっと新しいはずです。
また、地球でこのような沈殿物が作られる際にはバクテリアなどがそのスピードを速めることがわかっているため、火星の球体と微生物の活動との関連性についての研究が予定されているといいます。


 火星の海の幻想

原始の地球や火星には隕石が降り注ぎ、そこから揮発した二酸化炭素を主体とする大気に包まれていました。隕石の衝突が少なくなると惑星は冷えはじめ、大気中の水蒸気が雨となって降り注ぎ、海を作りました。
火星にも水が流れたと思われる痕跡が残っていることから、かつては大量の水があったと考えられていましたが、今回の「スピリット」と「オポチュニティ」の活躍で、実際に水が存在した可能性が高まったというわけです。
もしかしたら、このころの火星は地球と同じような青い星だったのかもしれません。

しかし、火星の赤道は半径は地球の約半分強。
その大きさが地球と火星の運命を隔てたと言えます。
それなりの大きさのある地球の中心はまだ熱く、マントルの対流が起こっています。
それによって二酸化炭素の循環がおこり、地球の環境は一定範囲内に維持され、常に液体の水が存在し続けました。
しかし、火星ではその小ささが災いして冷却が遙かに早く進み、火山活動も停止してしまったのです。
また、重力も弱いために火星の大気は宇宙ヘと拡散してしまいました。

では、火星に海があったのはどれくらいの時間だったのでしょうか。
クレーターの浸食具合によって計算したところによると、8〜10億年間は火星に海があったとする説があります。
地球では地球誕生から約7億年で生命が誕生していたことを考えると、火星にも生命が誕生していた可能性はあります。

シャーマンストーンがあるナバホ砂岩の小さな穴にはバクテリアが存在するそうで、同じような「ブルーベリー」が存在する火星の岩からも、もしかしたら生命の痕跡が発見されるかもしれません。

「生命はきっと道を見つける」
……とは、個人的に映画よりもずっとおもしろかった「ジュラシック・パーク」の原作の中で登場人物がつぶやく言葉ですが、もしかしたら、痕跡どころか生命そのものが見つかるかもしれません。

(2005年1月4日、ブログ掲載)


 

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