ネパール産 ファントム・クォーツ

砂漠と森と天と




 自然環境が文明を作る

「森林の思考・砂漠の思考」(鈴木秀夫・NHKブックス)という本があります。
文化・文明によっていろいろな考え方の差異はありますが、大雑把にくくると、ヨーロッパ(キリスト教圏)を中心とした西洋的感覚とアジア(仏教圏)を中心とした東洋的考え方……という大きな分け方があると考えられます。
この本では、アジアは日本を中心に想定されているようなので、それに従って述べますが、片や自分の意見をはっきり持つことを良しとし、片や本音と建前を持つ。
片やものごとを「量感」で見ているのに対し、片や「配置」で見ている。
片やマクロな「総合」に長け、片やミクロな「分析」に長ける……。
そういった違いが文・文明化の根幹をなす宗教に、さらにはその宗教が生まれた自然環境……砂漠と森林にあるのではないか……と考える、興味深い本です。


 「砂漠」の感覚

砂漠と森林と書きましたが、冒頭にあげた西洋的感覚の中心となるヨーロッパはもちろん砂漠ではありません。
これは砂漠(とその周辺部)から生まれた宗教(文化)の影響下にあるか、森林から生まれた宗教(文化)の影響かにあるかということです。
この本の著者が言うところの砂漠的性格のものの見方・考え方の特徴は「視点が上にある」……つまり俯瞰で見ていることにあります。
砂漠で生きていくためには、たとえばどこにオアシスがあるかなどを常に意識せねばならず、そのために俯瞰で物事を広くとらえ、俯瞰で見るために「量感」の感覚が発達し、
厳しい砂漠で生きるために、ものごとをはっきり判断するという姿勢が生まれるというのです。


 
「森」の感覚

一方、森林的性格の考え方では、視点は地上の一点(自分)にあります
広い視界がきく砂漠と違い、木々に囲まれた森林世界の視界はものとものとが重なり合う「配置」の世界です。
多くの命に囲まれる中では、あらゆるものに神が宿る多神教が生まれ、食物連鎖でつながる命を間近に見ることで輪廻転生の考えも生まれます。
これらの考え方は、細かい点ではどうかなと思うところもあるのですが、大筋では興味深く頷くことができます。


 ワイルド・ガネーシュ!

……とまあ、いきなりカタそうな話からはじめてしまいましたが、
それも今回のネタ石……大好きなガネーシュ産ヒマラヤ水晶のため。

ガネーシュ産ヒマラヤ水晶はこれまでにもいくつか登場させていますが、ふと考えると、お気に入りのこの石を登場させていませんでした。
ヒマラヤ水晶のページや、ファントムなどのくくりで他の石と一緒に出したことはありますが、単独では初めてです。
本の話はちょっと中断して、今回の石をご紹介します。

長いのとずんぐり短いポイントがついたクラスターで、母岩もついています。
緑泥も混じっていて、結晶面もやや磨りガラス調で、
まさにワイルド・ガネーシュ!
お気に入りなのですが、なかなかこれという全体写真が撮れない石でもあります。

ガネーシュ産のヒマラヤと言えば、ワイルドな形、氷のような透明感やあるいは美しい緑泥が特徴。(←個人的意見です)
ではこの石はというと、形はともかく、内包物が多くて透明感はいまいち、緑泥もきれいというわけではありません。
なのになぜお気に入りなのかと言うと……




実は、内包物と見えたのはファントムだったりするんですねえ……。
しかもこのファントム、きれいな山形ではなく、時には先が欠けたような形だったりとさまざまで、光に透かしたときには、まるで石が蠢き、形を変えながら、天へ天へと伸びていこうとしているように見えました。

 
ヒマラヤと日本

それはまさにヒマラヤ山脈のイメージ。
ご存じのように、ヒマラヤ山脈はインドプレートがユーラシアプレートに衝突し、下に潜り込んでユーラシアプレートを持ち上げる形となることで生まれたといいます。
しかし、プレートの厚さを考えると、それだけでは6000メートルほどの高さにしかならないのだそうです。
しかし、ヒマラヤ山脈はご存じのように8000メートルの山さえ存在します。これはどういうことかというと、二つのプレートに挟まれることになったもろい地層(テチス海)が変形して押し上げられ、現在のような世界の最高峰になったのだとか。
ヒマラヤでアンモナイトの化石が発見されるのも、この理由によるものです。

こうして「世界の屋根」となったヒマラヤ山脈は、ユーラシアの気候に大きな影響を及ぼすことになりました。
インドの南で発生した水蒸気はヒマラヤ山脈にぶつかって雨を降らせ、モンスーン気候を作り出し、
さらに向きを変えて日本にも影響を与えています。
チベット高原が乾燥しているのも、その高度だけではなくヒマラヤが壁となって水蒸気を遮っているからだそうです。
もし、ヒマラヤ山脈が現在の位置になければ、日本の気候は今のようなものではなかったかもしれません。

すると、森林に発した「森林的」なものの見方、考え方にも変化がおこっていたに違いありません。
日本は、縄文の昔から山々は木々に覆われ、弥生時代の農耕、その後の木の文化……と、常に森と共にあり、森林的ものの考え方の影響下にあったといえます。
ともかく、この石は光に透かしたとたん一目惚れ。以来、手に持って光にかざし、ファントムが天へと昇るように見えたあの一瞬を写真に撮れないかと試行錯誤を繰り返しています。



見方を変えれば、それはヒマラヤに端を発している……と言えるのではないでしょうか。
ヒマラヤ水晶に惹かれる感覚の中には、そんな理由もあったりして……(笑)。

石の話に戻ります。
ともかく、この石は光に透かしたとたん一目惚れ。以来、手に持って光にかざし、ファントムが天へと昇るように見えたあの一瞬を写真に撮れないかと試行錯誤を繰り返しています。
さらに、ずんぐり短い方にもファントムが入っていまして、なんとファセットがダウ。
ヒマラヤのシャーマン・ダウ(もちろん非研磨!)だったりします。

持ち歩くことはもちろん、飾るにも不安定過ぎて、トルマリンのさざれを敷いた皿に横たえておくしかないのですが、好きなヒマラヤトップ3に入る石です。


(2005年1月8日、ブログ掲載)


 

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