イタリア産 モリオン

黒に思う





 モリオン諸説

私の石の多くは水晶です。
形がおもしろいもの、変なもののほか、ある決まった色の水晶も集めています。
これまでにいくつか紹介してきた青い水晶もターゲットのひとつですが、それ以前から集めているのが
黒い水晶です

黒い水晶は、モリオンともカンゴームとも呼ばれます。
カンゴームの中で色の濃いものをモリオンと呼ぶのだとも、茶色がかったものをカンゴーム、黒いものをモリオンと呼ぶのだとも言われ、諸説さまざまです。

そもそも黒水晶そのものが、煙水晶の濃いものだとする説と、煙水晶と黒水晶は別なのだとする説があります。
明確な規定はないようですが、まっ黒な水晶にもつやがあるものと、つや消しのものとがあります。

このつや消しの黒い水晶は、見かけは決して良くありませんが、何とも言えない迫力と、静謐な存在感があるように思います。

 黒水晶のメカニズムは?

黒水晶とは何なのか。

いろいろ調べてみたり、石屋さんに聞いてみたりしました。
その結果はこちらのコーナーに書きましたが、ここで簡単にまとめてしまうと、どちらも発色の原因はアルミニウムイオン。水晶を形成する珪素の一部がアルミニウムに置き換わり、天然の放射線にさらされることで色が付いて見えているのだとされています。
その中で煙水晶よりもさらに放射線を浴びて、結晶構造がくずれたもの……それがモリオンだといわれています。
もちろん、これは一説ですが、とある石屋さんでモリオンは丸玉に磨いても他の水晶のようにつやつやにならないのだと聞いたことに符号します。
なので、私は黒水晶はアルミニウムと放射線によって発色し、放射線によって結晶構造が崩れているもの……だと思っています。

このたび新たな説を見つけました。


それは、放射線によって発色しているものが煙水晶
それ以外の原因によって発色しているものが黒水晶
だというものです。

放射線以外の原因による黒水晶と考えられているのが、写真のイタリア産モリオンです。
写真では影のために灰色っぽく見えていますが、真っ白な大理石の中にまっ黒で両錐の黒水晶が埋まっています。

不思議なことにほとんどが両錐で小ぶり。クラスターになっているものは見たことがありません。
なぜ、この石が放射線による発色でないとわかるかというと、この真っ白な母岩は天然の放射能レベルが低く、他の産地の黒水晶のように放射能による発色はあまり期待できないからだそうです。
通常言われている放射線以外の発色原因とは何か……有機物の混入ではないかとする説もあるようですが、残念ながらわかっていません。

 黒水晶のすごみ

いやあ、そういうことだとは調べてみるまで知らなかったのですが、真っ白な中のまっ黒な水晶……というこの取り合わせが美しくて探していて、珍しくネットで買ってしまいました。

小さくてもつや消し黒の貫禄は十分。
水晶の「晶」という文字には「輝く」という意味があるといいます。
また「すいしょう」という音も、「きらきら輝く」という音象を持つようです。
つまり、水晶は石でありながら輝き、黒水晶は水晶でありながら輝かない。
こんな二重の二律背反が何とも言えずカッコイイ……というのは、ちょっと美化しすぎでしょうか。

さて、この黒水晶、右側に写っているように、ざっくり傷が入っております。
「だから、ネット買いは恐いんだよなー」という話かといえば、そうではありません。
この傷、けっこう好きなんですよ(笑)。

余計にすごみが増すようで。

海王石などもそうですが、真っ白い母岩にまっ黒な石という取り合わせは、あるイメージをかき立てます。

指輪物語に登場する、ゴンドールの執政・デネソールです。

原作および映画をみた方にしか通じませんね、この話。
映画の3作目で、どこかモダンな白い宮殿の玉座の下に、影のように座っていた黒衣の執政……。
映画では時間のせいでその深みが殺がれてしまったのが残念でしたが、原作のデネソールの矜持と絶望……そのイメージにぴったりだと思うのです。


(2005年1月12日、ブログ掲載)


 

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