捕獲 2006年池袋ショーの戦利品、いや、あれば買おうと思っていた「捕獲品」。 ブラジルは、リオ・グランデ・ド・スール州産の「白濁水晶」です。 はじめて見たのは、6月の新宿ショー。どうしようかと悩みつつ、最終日にインド産の「▽付蝕像水晶」などを買ってしまって、つい機会を逃してしまった石でした。 その後も何となく気になり続けていたので、「あったら買おう」と、同じお店にいってみたところめでたくゲット。 ラベルと一緒にいただいた説明によると、 「普通の水晶として生成後、自然界で強いアルカリ性あるいは酸性にさらされ、コロイド(ゼラチン)状に溶かされたのち硬化したもの」 ……だそうです。 ラベルに書かれていた「turbid」は「濁った」というような意味なので、この溶かされた云々ではなく、白く不透明な色合いを表す名前であるようです。 さて、この水晶と言うよりはもこもこしたなにやら別物のようなこの石、溶けたと言えばそんなような。 しかしながら「そうか、溶けてこうなったのか、ふむふむ」で終わらせるわけにはいきません。 ぶよんぶよん? 溶けた水晶といえば、いくつかあります。 こちらのブラジル産とか、 なぜかセプターと言われているオーストリア産とか、 実はあったりするぞ、ネパール産とか、 ご存じ、インド産、ほんのりピンク水晶とか……。 こうして見ると、けっこう持っているなあ、溶け水晶。 それはさておき、ひとくちに「溶けた」といってもその表情はさまざまです。あるものはスポンジ状になり、あるものはごつごつと削ったようになり……。 もちろんトライゴーニック(「▽」)も溶けて現われるものです。 こうしてみると、水晶が溶けてゴツゴツすることはあっても、こんな風につるりんと丸くなることはないような……。 本当に溶けているんでしょうか、この水晶。もしかして、水晶の上にカルセドニーが被さって、まあるくコーティングされちゃってるんじゃないだろうか。 そう思ってよくよく見てみましたが、偶然かけていたポイントの断面を見てみても、水晶の上にカルセドニー……という感じの境目は見えません。 では、水晶に見えて丸ごとカルセドニーかというと、まるくなってはいるものの、なんとなく水晶の六角形を保っているところもあり、カルセドニーがたまたまこういう形になったとは思えません。 とかされ方が特殊なのでしょうか? 説明には「酸性化アルカリ性にさらされ……」とありますが、水晶が溶かされるのは、たいていそういうものです。 では「コロイド(ゼラチン)状に」とは。 この説明を読む限り、酸ないしはアルカリによって、一反水晶がぶよんぶよんに軟らかくなって再び固まった……と読めるんですが、まさかそんなことがあるのでしょうか。 溶けた部分が溶け消えたり、流されて消えてしまうのではなく、その場に留まり、徐々に内部まで溶けてぶよんぶよん……ちょっと想像できません。 実は一種類じゃない? ここで思うのは、水晶(石英)とひとまとめにしているものには、実はいろいろなタイプがあるのではないかということ。 たとえば、カルサイトとアラゴナイトは、成分は同じでありながら結晶の仕方が違う同質異像の鉱物です。 それを言うなら水晶にも右水晶や左水晶のような例があるわけで、昔からよく知られているが故にひとまとめに「水晶(石英)」とされているものの、そうではなく、後世になって研究された鉱物だったら、別の鉱物に分類されていたりするかもしれません。 そこまではいえなくても、全部が全部同じ性質ではなく、産地によって見えない特質があるのかもしれません。 もうひとつ思うのは、「やっぱり、リオ・グランデ・ド・スール……」……というのも、この産地は実はブラジルの中でも個性派なのです。 たとえば、アメジストのジオード(カペラ)の産地もここ。 フラワー・アメシストの産地もここ。 ブラジルの中でみごとな犬牙状のカルサイトを産出するのもここ。 もちろんスタンダードな透明水晶も産出するようですが、なかなか個性的な水晶を産出する地でもあるようなのです。 だから、こういう水晶が出てきても、ちっとも不思議ではありません。 (なぜ、こういう水晶ができたのかという理由にはなりませんが) パッと見には変わらぬ水晶が、溶けたときに新たな個性を見せ始める不思議。 変わらぬもの、不動のものというイメージがつきまとう石が「溶ける」。 中には、地中深くで結晶し、ついに日の目を見ることなく溶けて消えた水晶もあることでしょう。 生まれ、そして消える、それはまるで命あるもののよう。 溶け消える途中で時を止めて、手の中にやってきた水晶を見ていると、新たなイメージが広がります。 2006年12月22日、ブログ掲載 |
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