最重量アメジスト パキスタン産、アメシストです。 片手にずっしりの、我が家の石にはあるまじき大きさで、間違いなく最重量アメシストです。 産地を聞いたところ、お店の人は「ギルギット」。 たいていの石は、何でもかんでも「ギルギット」。 前回の雑記に書いたように、本当のギルギット産ではなくて、その周辺、もしくはパキスタン北部で採れた石がギルギットに集まり、そこで仕入れられたために「産地はギルギット」になっている可能性は大。 事実、後日ネットで調べてみると、ブルー・スピネルはギルギットじゃなくてやや北のフンザだろうとか、ショールががっちり付いているのはDassuかもしれないとか、いろいろな産地がヒットしてきます。 さて、このアメシスト、お店の方の言葉を信じるならば、ギルギット産。 言うまでもなく、ギルギットはヒマラヤ山脈の西の端。 ……ということは、これは、ヒマラヤ・アメシスト! しかも、このボリューム、淡いとはいえ、まごうことなくアメシスト。 わーい♪ ……と、喜ぶにはやや疑問が残ります。 お店の扱っている品からいくと、パキスタンもしくはアフガニスタンであることはほぼ間違いないのですが、もうちょっとくわしい産地が別れば……。 そんなことを考えていたら、意外な産地が浮上してきました。 もしかしてK2? きっかけは、2006年10月のIMAGE2006です。 この石を買ったのとは別の、しかし、同じくパキスタンやアフガニスタンの石を扱うお店の前を通ったところ、「これは同じ産地だろう」と思わせるアメシストを見かけました。 淡いラベンダー色も、やや鉄分っぽい付着物も、母岩の感じもそっくり。 たぶん、同じ産地でまちがいありません。 その産地は「K2」。 パキスタンと中国の国境にそびえる、世界第2位の高さを誇る山です。 (※このあたりはカシミール問題が影を落としている地域です) 高さは8611メートル。 K2とは、最初にこのあたりの山を測量した際、カラコルムの「K」をとって仮に「K1」「K2」「K3」……と名前を付けたのが、未だに残っているのだそうです。 ちなみに、その後「K1」や「K3」などほかの「K」の山は、別にちゃんとした名前が付けられたそうですが、「K2」だけはそのまんま。現地では「チョゴリ」と呼ばれることもあるようです。 ネットで調べてみても、同じようなアメシスト、もしくはK2の石は出てこないので、確認しようがないのですが、「K2」産だったらいいなあ……。 高さは世界2位でも、険しさはエベレストを凌駕し、登頂者はエベレストよりも少ないという「天空の王者」K2。 以前、K2産のラベルが付いたファーデンを見かけたものの、高くて買いそびれ、悔しい思いをしたことがあったので、ここで再びK2石に出会えたとなれば、これはラッキー!(片や5センチくらいのファーデン、こちらは片手ずっしりのクラスター。なのに、クラスターの方が安かった……) ただし、これがK2産となると、ヒマラヤ・アメシストとは言えなくなってしまうのでしょうか。 ヒマラヤだ、カラコルムだといいながら、その位置関係がいまいち頭に入っていないので、パキスタン北部の地図を作ってみました。 地図でチェック! ついでに、ギルギット(Gilgit)やスカルドゥ(Skardu)、フンザ(Hunza)、Shigar、Dassuなど、石の産地として見かけた地名を落とし込んでみました。 おお、地図に落とすまで、K2はもっとアフガニスタンよりだと思ってました。 こうしてみると、カラコルム山脈は、ややヒマラヤ山脈に重なりながら平行に伸びていて、さまざまな産地は二つの大山脈にはさまれた谷間に並んでいることがわかります。 ギルギットやShigarが、ときどき「Valley」を付けて呼ばれているのはきっとそのせいなのでしょう。 また、参考にした地図に道路も載っていたので、ついでに載せてみたら、やはり落とし込んだ地名は道路沿い。ここに落とし込んだ地名は、集積地の意味合いもかなり濃いと見た方が良いようです。 この地図を元に考えると、狭い意味でのヒマラヤ水晶と言えるのは、ギルギットやスカルドゥ、Shigar産のもの。 フンザやK2はカラコルム山脈です。 ところで、ヒマラヤ山脈にはいくつかの範囲の考え方があって、一番狭いものは、こちらの地図に記した、インドの東端からブータン、ネパールを経てギルギットに至る部分。 それにカラコルムやヒンズークシを加えることもあるようで、もっとも広く解釈すると、遠くテンシャン山脈まで含めてしまう説もあるのだとか。 そこまで拡大解釈しなくても、K2はヒマラヤとカラコルムが平行している部分にあるので、とても近いと言えます。 ここはひとつ、個人的わがままで「ヒマラヤ・アメシスト」にしたい気分。 拡大ヒマラヤ範囲内であるヒンズークシ山脈が走るアフガニスタンからは、濃いアメシストが出ているので、今後、狭い意味でのヒマラヤ山脈からもっと濃いアメシストが出る可能性も皆無ではありません。 そうか、こういう位置関係だったのか。 地図を見ながら石を見ると、さらに見えてくるものがあるようで楽しいです。 2007年1月6日、ブログ掲載 |
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