マダガスカル産 ヘマタイト・クォーツ

染まる石




 シトリンじゃない黄色

マダガスカル産の水晶です。
大きさは4.5×3×3センチくらい、一般的なタンブルより二回りくらい大きい、ころんとした形です。

色は、ごらんの通りのほんわりイエロー。
しかしながら、シトリンではありません。 ベースは透明水晶です。
水晶にクラック(ひび)が入り、そこにおそらく鉄分であろうと思われる(ヘマタイトと説明されていました)成分が染みこみ、そのために全体がふんわり黄色に見えています。

ブラジル産の水晶で、表面を薄く鉄分がコーティングしているために黄色〜オレンジに見える「タンジェリン・クォーツ」がありますが、これは、中に染みこみバージョンというわけです。

結晶ではなく、塊状の石英だたっためにこのように磨かれているのでしょうが、なんだか、ぷるるんとしたみずみずしい雰囲気です。

 
「加工申告」は親切か?

さて、今回の石にかこつけて、考えてみたいことがあります。
ネットでいろいろなサイトやショップを徘徊していると、
「水晶を染めてあります」という説明を見かけることがあります。

気を付けていないと、ふーん、染めてあるんだ……と、それで終わってしまいますが、ちょっと待ってください。
この説明は、時に
危ないことがあります。

「水晶を染めてあります」
これがお店の説明だった場合。
「加工してあります」と、自己申告してくれる、良心的なお店……とばかりは言えません。
なぜならば、この言い方は、「加工してあるけれど、ベースは天然水晶です」というイメージを植え付けている場合があるからです。

 
考えてみよう!

水晶を染める。 ……では、どうやって染めるのかを考えてみなければなりません。
水晶の仲間であるカルセドニーやアゲートは、ミクロサイズの石英の結晶が固まった、つぶつぶ構造の石。
つまり、ミクロサイズの隙間がたくさんある石なので、染料が染みこみやすく、簡単に染められます。

しかし、水晶には、そのような隙間はありません。
奇抜な色に染められている瑪瑙のスライスも、途中に結晶している水晶の部分があった場合、結晶の隙間に色が入っていても、結晶そのものは染まっていませんよね。

水晶に染料をきれいに染みこませ、透明なまま色を付けることはできません。
水晶を一度熱して染料の中に漬けて急冷し、急冷することでひびをいれて、そこに染料をしみ込ませる技法があるそうですが、これは、要するに今回の写真の場合と同じで、「中に何か入っている」「ひびに染みこんでいる」のがバレバレです。
この方法では、全体的に透明な色を付けることはできないのです。

表面に色を塗ってみてはどうでしょう。
これは水の染みこまないガラスに色を塗るのと同じで、なんとか色が付けられたとしても、こすったり濡れたりしたら色落ち必至。
やるだけ無駄な、ばかげた方法です。

 
ガラスは染めているとは言えない

「水晶を染めてあります」と説明されたその石が、染めてあることが一目でわかるものではなく、透明で全体的に色づいているものだとしたら。

まず考えられるのは、水晶に放射線や加熱による加工を施したもの。
アメジストを加熱して黄色くしたり、透明な水晶に放射線を照射してスモーキーやモリオンに加工するのは有名です。
しかし、これは「着色」とは言うかもしれないですが、「染色」「染める」とはちょっといえないような。

もうひとつは、溶かして色を入れて固めたもの。
つまりは練り水晶と言われているものと同じです。
残念ながら溶かした時点で結晶ではなくなり、水晶(石英)ではなくてガラスとなります。
これでは「水晶を染めた」とは言えません。

ひどい場合には、原料が水晶ですらないガラスということもあるかもしれません。
クリスタル・ガラスというのがありますが、これはガラスに鉛を混ぜてきらめきや透明感を増したもの。
名前がクリスタルであるからと言って、水晶が原料ではありません。

 
「染める」という意味を考える

中国産で、天然の水晶の上に緑や紫、黄色の層を人工的に結晶させたものがあります。
これは……原石状態のものばかりなので、ビーズなどの加工品では、可能性は低いでしょう。
この場合は、ベースが天然の水晶なので、「天然緑水晶」の表示は間違いではありませんが、「天然の緑」ではありません。

残るひとつは、人工的に結晶させた水晶です。
「人工水晶」と言ってしまうと練り水晶を含んでしまう場合があるので、合成水晶と呼ぶ場合もあるようです。
この合成水晶では、シベリアンブルーやシベリアングリーンと呼ばれる透明感のある青や緑、赤、黄色、など各色があります。
アメジストやローズクォーツにも人工的に結晶させたものがあります。
しかし、これも「染めた」とは言えないでしょう。

さて、水晶を染めたって、
いったいどうやって
お店でそんな説明をきいたら、ぜひともツッコミを入れてください。
ここに書いていない新たな技法があれば、ご一報を!

2007年6月26日、ブログ掲載
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