ずんぐり・クラスター Iガネーシュ・ヒマール産水晶です。 ずんぐり型のガネーシュで、母岩がついたクラスターが欲しいなあ……と考えていたところに出会いました。 緑泥が入ったとんがり型結晶のクラスターは、ほどほど手に届く範囲内のものが見つかりますが、ずんぐり型結晶の場合は、クラスター、それも結晶がいくつかくっついているのではなくて、母岩の上に結晶がくっついているようなタイプは少なく、大きければ、ずんぐりなだけに重く、高い。 かといって小さなものではずんぐり型の結晶がもつ、堂々とした雰囲気が薄れてしまう。 それくらいなら、単結晶に手が伸びる……。 そんなこんなで、ないわけではないけれど縁がない。そういう石もあります。 それでも頭の中の「欲しい石リスト」に入れて探していると、出会いは思いがけないところでやってきます。 場所はミネラルショー。昨年は当たりのお店で、盛んに「発掘」したけれど、今年はどうにもぱっとしなくてハズレ。そう思って一度はあきらめた店でした。 ところが。 何周も会場を巡り、見たはずの店を覗き、隅の隅をほじくるように見ていたとき。 まず見つけたのは、片手からはみ出しそうな大きさの単結晶。 表面がカテドラルともエレスチャルとも違う不思議な凸凹に覆われていて、一見してただいまマイブームの溶け水晶(触像水晶)を思わせました。 「お」 と思ったものの、ネックはその大きさ。 いくらミネラルショーでも、量り売りでも、大きければそれなりの値段になります。 「このタイプの、小さいのがあればいいのにな……」 ……と探して出てきたのが、今回の石だったのです。 幅8センチ、多きい方の結晶の高さ5センチ。 ほどよい大きさで、ずんぐり型で、母岩付き。表面は凸凹触像風。 測ってもらうとお値段お手頃、いるじゃないか、いいヤツが!……ということで即決! さて「触像風」と表現してみたこの石、 実は、未だに触像なのか、そうでないのか判断を付けかねています。 表面をアップにしてみました。 |
アップにしても不思議な石です。 光を反射している面に、凸凹というかぼつぼつ見えているのは、レコードキーパーと同じ成長丘の一種ではないかと思われます。 凸凹に溶けてしまうほどの腐食を受けていたら、こんな微妙な凸凹など、真っ先に溶けてなくなりそうなので、この水晶は溶けていない……? しかし、先端やエッジ(面と面の合わせ目)などが、「溶けていないとは思えない」ほど、妙になめらかです。 何よりこの水晶は、カテドラルのように複数の結晶が寄り集まって一つの形を作っているわけでもなく、エレスチャルのように角の部分がよけいに成長してできた骸水晶のようでもありません。 もちろん、表面に小さな結晶がくっついているわけでもありません。 いったいこれは何だろう。 水晶には、錐面もエッジも無傷で、それなのに一つおきの柱面に溶けてできたといわれる模様を持つ水晶があります。 そのように、全体が一様に溶けるのではなくて、溶けやすいところから溶けて、無傷で残っている部分もある……と考えると、今のところは、写真の水晶が溶けている説が有利です。 タイトルに付けたテチスとは、ヒマラヤ山脈ができる以前、インドとユーラシアの間にあった海の名前です。 その後、インドがユーラシアに近づくと、テチス海は浅くなり、ついにはなくなってしまいました。 その海底の一部がインドによってユーラシアの大陸の端と一緒に持ち上げられ、(厳密に言うともっと複雑なのですが)ヒマラヤ山脈になりました。 ヒマラヤからアンモナイトの化石がでるのは、そのためです。 表面が凸凹なので、ちょっと見過ごしてしまいますが、この水晶の透明感はなかなかのもの。 表面が凸凹しているのに、不思議に荒々しい雰囲気ではなくて、透明な水が、さざ波が立つことで輝いて見える、そんなようすに感じます。 まるで、浅く、あたたかい海であったといわれるテチス海のような。 あるいは、その名前の由来であるという海の女神のような。 一見ワイルドなのに、手触りはやさしい、ちょっと不思議な石なのです。 2007年11月6日、ブログ掲載 |
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