この色は……? I「シトリン?」です。磨きのポイントです。産地不明です。 「(カッコ)」と?がついているのは、これをシトリンと言い切ってしまうには、かなりためらいがあるからです。 やや緑がかった黄色、透明度抜群、内部のクラックは、琥珀のサン・スパングル(琥珀特有の丸いひび)のようで、底には角度によって虹が出て、見た目はとてもきれいです。 写真ではやや渋めの色合いに写っていて、実物はもう少し華やかな色。 だけど、これは天然のシトリン……? もちろん、お店の人に聞いてみました。 「これは、天然の色ですか? 加熱処理がされていたりしますか?」 天然シトリンですか? と聞かないのは、店によっては元が天然水晶であれば、加熱や放射線処理を施してあっても天然水晶、天然シトリンと見なしているところがあるからです。 果たして、お店の答えは……「天然の色ですよ」。 でも……こういう黄緑が買ったシトリンは、ロシアとかカザフスタン産のしか見たことがありません。 「産地はわかりますか?」と私。 「えーと、中国か、ブラジルですね」とお店の人。 中国、ブラジル……どちらも水晶の大産地。 日本人で血液型を当ててみろと言われた場合、とりあえず「A型」と言っておけば、あたる確率が高い……という感じで、これはもう、「産地不明」といわれているようなもの。 お店の品揃えを見るに、どうやら中国産である可能性が高そうです。 いやまあ、きれいだからいいんですが。 同じところに並んでいた仲間石は色が浅いもの、クラックが多いものなどいろいろあって、その中でも目立ってきれいで、それなのに大きさがやや小振りであるため、一番安いという「おいしい石」。 もしかしたら加熱処理ものかもしれないという可能性があったとしても、十分鑑賞に堪える美しさと、納得のお値段。 私が可能性を考えているのは、この石がスモーキーの加熱ではないかということです。 スモーキーの色は、極おおざっぱに言うと、水晶の成分である二酸化珪素の一部がアルミニウムに置き換わり、天然の放射線を浴びることで、光を吸収する仕組み(カラーセンター)ができ、結果として茶色〜黒に見えているものです。 加熱するとカラーセンターが消えて、色味が消えてしまいますが、一部のスモーキーは淡い黄色、あるいはやや緑みを帯びた黄色になります。 そう聞いていたので、この色合いは……もしかして。 その他の理由ももう少し。 産地としてあげられたブラジルと中国ですが、私が知る限り、ブラジル産でこの手の色合いは見たことがないような気がします。 もちろん、すべての石を見たわけではありませんが、今のところ。 ネットでも検索してみました。 よく似た色合いの磨きポイントが「レモン水晶」の名前で売られていました。 原石派石好きにとってはレモン水晶といえば、硫黄インクルージョンの水晶のことですが、スモーキーを加熱して作ったうす黄色の水晶を「レモン水晶」と呼ぶ場合もあるようなのです。 アルミナ(酸化アルミニウム)をコロイド状に含む石英(メタモルフォーゼス)を放射線+加熱で加工すると、やはり緑みを帯びた黄色の石英(オーロベルディ)になります。 ミネラルショーで、原石・クラスターで黄緑色っぽい水晶を見かけたことがありますが、売っていた店の人は「加熱加工されている」と言っていました。 最後に、個人的に、この石の美しさにもなっている内部のクラックが、ちょっと気になります。 透明な水晶では、あまり見かけないタイプのクラックで、何らかの加工をうかがわせます。 一方で、天然色説を考えさせるものもあります。 同じようにやや緑のニュアンスがある淡めのシトリンの中に、スモーキーのファントムが見られるものがあります。 これはどうやら中国産で、そのために「加熱だろう」と思っていたのですが、石屋さん(ルース系)に聞いてみたら、 「加熱だったらスモーキーのファントムまで消えてしまうよ」とのこと。 言われてみればなるほどです。 ……とまあ、見聞きした例による判断ですが、私の中ではやや加熱系。 きれいな石には、謎がある。 きれいだねえ……と愛でながら、いろいろ推理するのも一興です。 2007年11月7日、ブログ掲載 |
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