北海道産 日高翡翠

翠の石






翡翠の迷宮

ひすい……という石は、なかなかややこしくて奥が深い石です。
まず、ひすいという石は、鉱物的に見ると一種類の石ではないというのが、ややこしさその一。
ご存じ、ひすい(翡翠・ジェード)と呼ばれる石には、
軟玉と呼ばれるネフライトと、硬玉と呼ばれるジェダイト2種類があります
どちらも繊維状の組織が絡み合い、丈夫でさまざまな加工に耐える石ですが、それぞれの石の主要な成分を専門的に分類すると、ネフライトは角閃光石の一種、ジェダイトはひすい輝石という輝石の一種ということになります。
どちらもよく似た石ですが、その名の通り、硬玉と呼ばれるジェダイトのほうが、硬度も高く、産出量も少なく、宝石としての価値も高くなっています。

もとは一種類の石と考えられていたこともあるほど似た石なのに、片方の値段が高い石だというのがややこしさ、その二。
ジェタイトの産地は限られていて、新潟県糸魚川周辺、ミャンマー・カチン州、カザフスタン、ロシアのウラル山脈の北方、ロシア・アバカン、中南米のグアテマラの六か所だそうです。

フォルス・ネーム

それ以外の産地、たとえば、以下の「翡翠」はネフライトを指します。
●アメリカ翡翠
●カナダ翡翠
●台湾翡翠
●中国翡翠
●ニュージーランド翡翠

さらに、宝石の業界では、「偽の名前」……というと言葉が悪いですが、鉱物学的には根拠のないセールスネームとも言うべき「フォルス・ネーム」と言うのがありまして、そこでは、本来ひすいとは縁もゆかりもない石が、半透明から不透明で緑であるというだけで「翡翠」と呼ばれています。
これがややこしさその3。

ざっと挙げてみます。
●インド翡翠……アベンチュリン
●オーストラリア翡翠……クリソプレース(アップル・グリーンのカルセドニー)
●アマゾン翡翠……アマゾナイト
●コロラド翡翠……アマゾナイト
●スイス翡翠……グリーン・ジャスパー
●朝鮮翡翠……サーペンティン(蛇紋石)
●トランスバール翡翠(南アフリカ翡翠)……グロッシュラー・ガーネット
●ニュー・ジェイド……サーペンティン(蛇紋石)

……と、こんな風に線引きしてしまうのは、ひすい、特にジェダイトに宝石としての価値が発生したり、ひすいのパワーストーン的意味を考えるからであって、本来ひすいは「翡翠」という字が表すように、輝くような緑色の石を指していたのだと思われます。
日本では、それがたまたまジェタイトだったことから、「翡翠=ジェダイト」であり、それ以外はニセモノ……という意識があるのでしょう。

木漏れ日色の翠

むろん、ジェダイトではない石をジェダイト(本翡翠)であると称して売買したり、本来翡翠とは呼ばれない石を「翡翠(ジェード)です」と言って高い値段で売るのは論外ですが、ネフライトも、そのほかの緑の石たちも、それぞれに美しいと思います。

もし、ジェダイトを探すのであれば、「○○(地名)翡翠」とある場合はまず確認し、その場合も「翡翠ですか」「ジェードですか」ではなく
、「本翡翠ですか?」「ジェダイト(硬玉)ですか?」と確認した方がいいです。
めでたくジェダイトであるとわかっても、ワックスがびっしり塗ってあってつやつやに見えていたり、
染色されているものもあるそうです。

どのようなものをよしとするかはその人次第ですが、翡翠という石は、これほどにややこしい石でもあるのです。

さて、ずいぶん長くなってしまいましたが、写真の石は「日高翡翠」と呼ばれる石です。
鉱物的に見ると、クロムを含む透輝石が主成分だそうです。
この「日高翡翠」もフォルス・ネームであるとするところもありますが、色合いが美しく、繊維状の組織が絡み合う丈夫で細工に耐えうる構造の石であること、日本宝石学会誌という正規の機関に公表され、国際的に認定されたことから、「第3のひすい」とされているそうです。

難しいことはさておき、その色合いと、わずかに透ける様子が、新緑の木漏れ日を思わせる石で、縄文の昔、人々がひすいに特別な思いを寄せたわけがわかるような気がしてきます。




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