不思議水晶・ファーデン ちょっとしたきっかけからファーデン水晶の成り立ちを、自分なりに考えてみることにしました。 ファーデンは、板状の水晶のほぼ中心に、糸状の白い筋が入っている水晶のことで、「ファーデン」はドイツ語で「糸」を意味するそうです。英語に直せば「ファイバー」ですね。 日本語で「糸水晶」とか「繊維水晶」なんて名前を付けられなくてよかったかも……。 特徴は、結晶の中に筋が通っているといっても、水晶をポイント(とがった方)を上にして立てた場合の縦軸方向(C軸方向といいます)に入るのではなくて、この「筋」の両側に板状(タビー)のポイントがくる、つまり両錐(DT)のタビー水晶のちょうどおなかのあたりに筋が通っていることです。 つまり、ファーデン水晶は、そのほとんどが両錐(DT)です。 中には、筋を中心に板状の結晶がいろんな方向に成長しているものもあります。 (中には普通の結晶の真ん中に白い部分があるものをファーデン水晶と言っていたりするので注意) まずは写真を見ていただきましょう。ファーデン水晶の一大産地、パキスタン産です。 この石は、全体的にみると鳥の羽根みたいな形をしていてとてもキレイです。 よく見ていただくとわかるように、真ん中の筋を中心に写真の上下方向が結晶の先端になっています。 |
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右の写真はブラジル産です。 板状の結晶がL字型にくっついています。、わかりにくいのですが、Lの角に当たる部分に白い筋が入っています。 |
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こちらは、再びパキスタン産。 平たい水晶の真ん中に筋が入っていて、筋の両端に錐面があることがよくわかります。 |
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紛らわしいのがこちらです。これはファーデン水晶ではありません。 これはヒマラヤ水晶(インド産)のシングルポイント(片方にだけとがっている結晶)なのですが、途中が一度折れかけたのか、その部分だけ白くなっているのです。 とあるWEBショップで、こういうのをファーデン水晶として紹介しているのを見てびっくりしてしまいました。 |
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ファーデン誕生にはいろいろ説がある さて、このファーデン水晶、どのようにできたのかが謎につつまれている石でもあります。 ものの本や鉱物系のサイトを見ると、いくつか説があります。 簡単にまとめてみますと…… (1)「割れて修復した」説 すでに結晶していた板状の水晶に地殻変動などで割れ目ができ、その後、珪酸分に富んだ熱水がやって来て、割れ目をふさぐように結晶して白い筋ができた。 (2)「筋の部分が先に成長した」説 岩と岩の間に、はじめに筋の部分が育ち、そこから水晶の結晶が徐々に育った。 (3)「筋と水晶が同時に成長した」説 水晶を形成する晶洞(すきま)を満たした熱水に、何らかの衝撃で気泡や水泡が発生し、それが刺激となって複数の結晶がいっせいに成長した。 ……というところでしょうか。 一度割れた? (1)説 結論から言いましょう。私のいちおしは(3)です。 なぜだと思いますか? まず(1)です。 地殻変動で水晶が割れたといいますが……。変です。 なぜ、板状の水晶ばかりが、同じように割れたのでしょう? 板状だから割れやすいとも言えますが、ことごとく同じように真ん中で、割れるものでしょうか。 写真の羽根のようなファーデンなど、筋の通りに割れるより、別の方向に割れた方が自然でしょう。それに、割れたものが全部くっつくというのも変です。割れたままのもあっていいはずです。 ファーデン水晶は珍しい水晶の部類に入りますが、ほとんど見ることができないというほど珍しいものではないと思います。 つごう良く水晶が割れてつごう良くくっつく……そんな奇跡のような水晶が珍しいとはいえ、それなりの数が出回っているというのはあり得ないのではないでしょうか……。 (1)にはもうひとつ腑に落ちないところがあるのですが、それは(2)と一緒に説明します。 先に筋が成長した? (2)説 それでは(2)です。 (2)は、(3)と似ているようですが、「岩の間で」というところと、なぜ筋の部分だけが成長したのかが説明できない所が違います。 ここで、簡単に水晶の成長のしかたをおさらいします。 水晶が成長する状況には何種類かあるようですが、ここではもっともスタンダードと思われるものをまとめてみます。 ただ……先に言い訳してしまいますが、調べてみたのですが、水晶の成長方法というのは、案外資料が少ないのです。資料があったかと思うと専門用語だらけで難しい……。 それを無理矢理理解して(理解したつもり)、まとめたので、間違いがあるかもしれません。 水晶は地下のマグマの中にできた空洞や熱水脈の中で成長します。 水晶の原料となる珪酸分がとけ込んだ熱水に満たされ、高い圧力が加わった環境の空洞で、温度や圧力が下がって行くに従って空洞の壁面に小さな結晶が付着し、さらに温度や圧力が下がると小さな結晶がだんだん大きく成長していくのです。 ちなみに、この空洞がすべて結晶で埋め尽くされ、おなじみの六角形の結晶の形が見えなくなってしまうと「石英」と呼ばれます。 水晶は、たまたま周囲にスペースを残したまま成長を終え、結晶の形が保持された石英というわけです。 覚えておいていただきたいのは「空洞」と「熱水」です。 アメシストの「カペラ(ジオード)」を思い出していただくとよくわかるのではないでしょうか。カマクラみたいな岩の固まりの内部に、紫水晶の結晶がびっしりくっついているアレです。 そうです。水晶は空洞を満たした熱水の中で育つのです。結晶の形を残しているからには、周囲には(熱水に満たされた)空間があります。そのはずです。 そんな場所の水晶が地殻変動によって割れるでしょうか? 水晶が割れるほどの衝撃が加わったら、この空洞も壊れてしまうでしょう。そうしたら、割れた水晶は修復されません。 水晶の成長課程を考えると、(2)の「岩と岩の間で」というのも変です。 これを「岩の中の空洞で」という意味だとしても、同じ環境ならば、普通の水晶に結晶するはずなので、なぜ、筋の部分が結晶するのか考えなくてはなりません。 熱水流入の刺激で成長!? それが説明できそうなのが(3)です。 水晶が結晶する条件がととのった空洞に、細かい亀裂が入り、あるいは元々あった隙間から、新たな熱水が入り込んできたとしたらどうでしょうか。 そう……ぷしゅーっっと勢いよく。 ちょっと話は変わりますが、人工雨というのがあります。 雲も中に弾丸を撃ち込んでショックを与えたり、ヨウ化銀を散布すると、雲の中の水蒸気が集まって雨になるというのです。 私が想像するファーデン水晶の成長過程はこれに似ています。 この↓写真をご覧下さい。 |
パキスタン産のファーデン水晶のクラスターです。 この石を見るまでは、ファーデン水晶というと、単結晶しか見たことがなかったので、ファーデン水晶がクラスターで産出されるなんて思っても見ませんでした。 そして、このクラスターを見たときから、割れた水晶が修復されたというファーデン水晶誕生の説明がおかしいと思い始めたのです。 写真がピンぼけで申し訳ないのですが、よくご覧下さい。 ファーデン水晶が一度割れて割れ目が修復されたものだというのなら、これだけの水晶が、こうもつごう良く割れるものでしょうか? 割れたとしても、ひとつとしてずれることなく、ことごとくくっついてくれるものでしょうか。 しかも、板状の水晶があっちこっちむいているのに、割れる方向はほぼ一定です。どのように力が加わったら、このように割れるというのでしょう。 しかも、左上の結晶はやや厚みがあるのですが、ファーデン水晶であると証明する筋は、厚みの真ん中を通っているのです! さらに、こっちの水晶にいたっては、筋があまりにもまっすぐ、しかも途中でとぎれています。 石が語る声を聞け すべてのファーデン水晶が同じ課程で誕生したとは言いませんが、少なくともこの石は……もしかしたら、典型的ファーデン水晶であると思う、パキスタン産のものは、空洞の割れ目から吹き出した新たな熱水の刺激によって誕生したものだと思います。 板状の結晶となったのは,熱水液のかなり強い流れの中で成長したためではないかという説もあるようですから、これもファーデン水晶誕生の説明としては合理的です。 そして何より、この石を手に持っていると、突如吹き出した熱水の細く鋭い流れが感じられるような気がするのです。 一筋ではなく幾筋も、細かな泡を伴うほどの勢いの流れが。 真実は、こうして手の中にある。 石の形そのものが、真実を語っている。 石が語る言葉を、正しく理解できているかどうかは心許ないですが……。 |
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