
残念ながら「妖怪」ではありません。「溶解」です。 さて、我らがおなじみ水晶はけっこう丈夫な石で、酸にもアルカリにも強く、1000度くらいの温度なら大丈夫なんだそうです。 そんな水晶を溶かしてしまうのがフッ化水素(水に溶けた状態ではフッ化水素酸)です。 結晶はその物質の性質に特有の成長のしかたをしますが、実は溶けるときにもそれぞれの個性が表れます。 たとえば、水晶の錐面に現れる凸状の三角形を「レコード」と呼びますが、これは専門用語でいうと「成長丘」という、成長途中の水晶の表情です。 (※凸状三角形が「レコード」で、「レコードを持つ水晶がレコードキーパー) そして、水晶がフッ化水素に軽〜く溶かされると、凹状の逆三角形が現れることがあります。 錐面に現れた凹状の逆三角形は「トライゴーニック」と呼ばれますが、レコードキーパーにくらべて見かける機会は圧倒的に少なく、パワーストーン関係のお店では、大変な高額商品となっています。 ところが水晶を溶かす物質や、トライゴーニックがなぜできるのかについてわかっているため、「トライゴーニックを人工的に作ることも可能」で、「人工トライゴーニックもある」という意見もあります。 私は人工ものがあるのかないのか、あるとしたらどれくらいでまわっているものなのかについては知りませんが、とある石屋さんにお聞きしたところ、 「確かにフッ化水素で水晶を溶かして作れるかもしれないが、濃度や時間の調整が難しく、実験室で実験してもそうはうまくいかない」 とのことでした。 気軽にほいほいと作れるものではないとわかって、ちょっとほっとしました。 いつもいつもロマンと無縁の「重箱の隅つつき話」をしている私ですが、ひとつくらいはお手頃なトライゴーニックらしいトライゴーニックが欲しいな、なんて思っていたので、簡単に作れるものではないと聞くとやはりうれしいです。 さて、先ほどちょっとわざとらしく「水晶がフッ化水素に軽〜く溶かされることでトライゴーニックができる」と書きましたが、じっくりたっぷり溶かされたらどうなるでしょう? 当たり前かもしれませんがしっかり溶けます。 それが写真の石です。 何と言いますか、表面がガサガサしているだけでなく、中の方まで溶けて、もののみごとにスポンジ状。 かなりイイ溶けっぷりです。 黒く見えているのはエピドート。エピドートはフッ化水素に強いのか、溶けた様子はありません。 これほどまでに溶けながら、かろうじて水晶の6角形と錐面の形状を保っています。 あともうちょっと溶解がすすめば、水晶としての形を失い、水晶だか石英だかわからなくなってしまうであろう、ぎりぎりのタイミングで踏みとどまっている石です。 エレスチャルと呼ばれる骸晶の説明に用いられる「水晶の最終形態」という言葉は、こんな水晶にこそふさわしいのではないでしょうか! (2005年2月28日、ブログ掲載) |

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