パキスタン産 アデュラリア

どんでん返し



 「氷のような」長石?

アデュラリアという美しい響きの名前を持つ長石(正長石の一種)があります。
和名は「氷長石」。これまたいかにも透明で美しそうなお名前。
さらに、「アデュラリアン・ムーンストーン」と呼ばれている、透明な中に神秘的な青い光が浮かぶ、美しいムーンストーンがあります。
ついでに申し上げますと、ムーンストーンとは、正長石の中でカボションカットなどに磨くことによってシラーと呼ばれる月の光のような美しい効果が現われるものを言います。
この効果のことを「アデュラレッセンス」と呼ぶ場合もあります。

……とくれば、「アデュラリアン・ムーンストーン」は、アデュラリア(氷長石)の中でシラーが現われるものである……と思って当然ではないでしょうか。
だって名前が「アデュラリアン」ですよ?

ところが、それが
大間違い
しかも、アデュラリアンにムーンストーンはない。それがどうして「アデュラリアン・ムーンストーン」?

 
びっくり長石

まずはアデュラリア(氷長石)とはどんな石か。それが今回の写真です。
実は、この石買ったときは正体不明でした。
お店の人に聞いてもわからず、正体不明ゆえに500円♪
なんといいますか、断面が細長い菱形(◇)の結晶がいくつもくっつきあったような形。
透明度は全くないわけではありませんが、クラックだの層だのがたくさんあるようす。
よく見るとビソライト(繊維状の緑閃石)が内包されています。

水晶ではもちろんないし、カルサイト……ではなさそうだし、ドロマイトかな〜? などと頭をひねっていたのですが、ある時、ネットでそっくりな石を発見。……え、氷長石
意外な名前に驚いて調べてみたら、断面が細長い菱形の結晶形は、間違いなく氷長石です。

そのときはアデュラリア=アデュラリアン・ムーンストーンだと思っていた私は、あまりにムーンストーンからかけ離れた形にびっくり。
もちろん、正長石でも不透明な石はたくさんあります。
でも……氷のように美しいから氷長石で、アデュラリアン・ムーンストーンでは無かったの?
さらに調べてみて、アデュラリアにムーンストーンが無いとわかってさらにびっくり。

これは一体何ごと!?

さて、ここでちょっとややこしく鉱物としてのムーンストーンのお話をば。
なぜ、ムーンストーンにはあの美しい光が現われるのか?

 
ムーンストーンのメカニズム

まず、長石という鉱物がちょっくらややこしいのです。
長石とはグループ名で、その成分や結晶形によっていろいろな種類に分けられます。
たとえば、ムーンストーンと呼ばれるシラーが現われる長石は正長石(オーソクレース)です。
アマゾナイトはマイクロクリン(微斜長石)の一種で、ラブラドライトは曹灰長石。
そのほかにも「アルバイト(曹長石)」だとか「オリゴクレース(灰曹長石)」「アンデシン(中性長石)」……書いているだけで頭がこんがらかってくるのでやめておきますが、とにかく、やたらとたくさんの種類があるのだとご理解下さい。

ムーンストーンはその多くが正長石、つまりカリウムを含む長石ですが、純粋に正長石だけというよりも、いくらかナトリウムを含んでいます。
(※インドやタンザニア産では、別の長石のムーンストーンもあるようです)
このような長石は、結晶して冷えていくとカリウムを含む長石(正長石)とナトリウムを含む長石(曹長石)に分離し薄い層になります。
層といっても顕微鏡サイズの非常に薄いもので、それがたくさん重なった状態になっています。
この層の厚みがちょうど良く、さらにこの層状構造に対して平行にカボションカットすると、ムーンストーンのあの美しい光があらわれるのだそうです。

大雑把に言うと、成分による層構造とその厚さ、カットの仕方がムーンストーンの輝きの大切な要素だということです。

 
ややこしすぎ

では、アデュラリアンにムーンストーンが無いというのは、この要素の何かが欠けているわけです。
ここで重要な意味を持ってくるのが、最初の方でちょこっと書いた、アデュラリア(氷長石)はオーソクレース(正長石)の変種であるということ。
私が調べたところによると、アデュラリアはほぼ純粋な正長石であるため、輝きのもととなる顕微鏡サイズの層状構造にならないのだそうです。

ムーンストーンは、薄い薄い層状の構造によって光の錯乱や干渉がおこってシラー(アデュラレッセンス)と呼ばれる輝きが生まれています。
その層状効果を持たないのでは、ムーンストーンになりようがありません。

なるほど。

では、アデュラリアン・ムーンストーンとか、アデュラレッセンスという、誤解されて当然のあの名前は……?
これは、まだ、鉱物の成分をくわしく分析できない頃、アデュラリアン・ムーンストーンは、その透明さゆえに、氷長石だろうと思われていいたそうです。
それにちなんでアデュラレッセンスという言葉も作られたのですが、のちによくよく分析してみたら、実は氷長石ではなかったのだそうです。
とんだどんでん返しの結果ですが、透明度が高く青く美しい光を保つムーンストーンをアデュラリアン・ムーンストーンと呼ぶ習慣や、アデュラレッセンスという言葉は生き残り、私のような大誤解を生み出し続けているのです。

ややこしすぎ。

最後に。氷長石はムーンストーンとならなくても美しい石です。念のため。

2007年1月14日、ブログ掲載
写真および文章の無断転載・転用はご遠慮下さい。推測・個人的意見が混じっています。




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