入っているけど空洞 パキスタン産の水晶です。
なにやら、太めの針状の内包物が縦横無尽に内包されているように見えますが、実は、違います。 内包されていません。 実は、水晶の向こう側に見えているとか、錯覚ではなくて、確かに水晶の内部にあるのですが、別の鉱物ではなくて空洞です。 かつて何かが内包されていたものが、抜け落ち、あるいは溶けて無くなり、その痕跡が空洞となって水晶の内部に残っているのです。 このような状態を、「チューブ・インクルージョン」といいます。 「抜け殻水晶」と呼ばれることもあります。 以前「抜け殻水晶」として売られていたものは、透明度も低く、「チューブ」の部分もがさがさしていましたが、数年前から見かけるようになったのは、抜群の透明感の水晶の中にくっきりとしたチューブ・インクルージョンがあるもの。 知らずにみると極上のシルバー・ルチルのようにさえ見えます。 さすがのお値段なので、今回の写真の水晶は透明度がやや低め。 それでもくっきり「チューブ」が見て取れます。 かつて入っていたものは、何だ? さて、このチューブ、いったい何が内包されていた痕なのでしょうか。 ます考えつくのがルチル。 パキスタン北部はルチル入り水晶が出るようですから、ネパールだった場合のように「え? ルチル?」と首を傾げなくてもすみます。 ……が、穴の断面はどちらかというと菱形っぽく、ルチルのようには見えません。 菱形というなら、エピドート。 もちろん、エピドートも産出する土地柄です。 しかし、水晶が溶けてエピドートが残っているものは見かけたことがありますが、その逆は……? 少なくとも水晶の方は無傷で、溶けた様子はありません。 私の持っている水晶ではありませんが、知り合いの石好きさんが持っている水晶では、クロシドライト(青石綿)が内包されているモノがあります。 太い束状でくっついていたものが、ほぼ抜け落ちて、溝の部分にわずかに残っているものもあります。 クロシドライトはリーベック閃石が繊維状になったもののことですから、もしかして、リーベック閃石の痕跡……? この「チューブ」は、表面に貫通しているものも多く、「ちゃんと穴が空いてるよ〜」と、細い針金を指したものを石屋さんに見せていただいたことがあります(笑)。 2007年7月13日、ブログ掲載 |
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