パキスタン産 ブロッカイト&ルチル入り水晶


鉄とチタン




 やっと写真撮れました

長らく、気に入った写真が撮れずにいた石に、やっと満足の一枚。
パキスタン産のブロッカイト入り水晶です。

しかし、今回の写真をご覧いただくにあたり、ちょっとばかりややこしい説明が必要です。
まず、ブロッカイト入り、と言われて写真を見た場合、水晶内の黒いルチルのようなものがそれか、と思われるかもしれません。
残念ながらこれは、見たとおりのルチルです。
ブロッカイトは、写真のやや右下、水晶にざくっと刺さっているように見える板状のものです。

角度を変えて写真をもう一枚。



むう、見にくい。ちゃんと撮れたら差し替えます。
クラスターのほぼ真ん中で光を反射しているのがブロッカイト。
名を板チタン石といいます。
単体ではこちらのような感じ。
文字通りの板状の鉱物なのです。リンク先の写真では、茶色っぽく透けていますが、そのうちに表面が酸化して、今回の写真のような黒っぽい色になってしまうそうです。

さて、この板チタン石(ブロッカイト)、成分はTiO2、二酸化チタン。
ルチルと同じです。
それもそのはず、ブロッカイトとルチルは、成分は同じで結晶の仕方が違うだけの、兄弟石。
このような関係を同質異像といいます。
そのため、結晶しているうちに温度が変化して、ブロッカイトを芯にしてルチルが結晶することもあります。
そういう場合は、ルチルは黒っぽいメタリックな色合いになり、ブロッカイトを芯にしているためか、羽のようなブラシのような、特徴的なようすになります。それが今回の上の写真です。

ブロッカイト入り水晶はブラジルでも産出しますが、パキスタンの方がやや珍しいようす。
例によって、玉石混淆の籠の中から、ここ掘れワンワンと掘り出したものなので、珍しいはずの産地にしては、破格。
というか、普通の水晶値段で手に入れた、大変ラッキーな石であります。

さて、今回この石をネタにするにあたって、気になることがあります。
それは、最近ネットショップで、「ブロッカイト入りヒマラヤ水晶」なるものを見かけることです。
産地はネパール、ガネーシュ・ヒマール。
←こういうのです。


パキスタンと同じくヒマラヤ山脈に属し、似たような山脈形成をしていると思われるので、同じような石が出ても不思議ではないかもしれませんが、私が知る限り、ガネーシュ・ヒマールで、明らかにルチルを内包した水晶を見たことがありません。
ちまたでルチルと言われているのは、角閃石かアクチノライト。
これは……? と首を傾げるものはありますが、まだ疑問の域を出ていません。
ましてや、ルチルよりも少ないブロッカイトに至っては、皆無。

「板チタン入り」とされる水晶の写真を見る限り、申し訳ないですが、ヘマタイトだろう、と思っています。最近のガネーシュ・ヒマールでは、板状のヘマタイトが刺さるように内包されているものも多いのです。

ヘマタイトも黒い金属光沢をしていますが、こちらは酸化鉄
二酸化チタンであるブロッカイトとは、全く別の鉱物です。

ではどう見分けるか。
ポイント1
ブロッカイトは、こちら(参考1)のような感じで先が尖ったシルエットをしています。

ポイント2
ブロッカイトの表面には、こちら(参考2)のように、縦に条線が見えます。
表面が酸化してもこの条線は確認できます。

ポイント3
水晶に内包された場合は、表面が酸化しないので、黒い金属光沢ではなくて、参考1の写真のように褐色に透けるような色合いをしているはずです。

ポイント4
ブロッカイト単体で内包されているものは少なく、1枚目の写真のように黒っぽいルチルを伴うことが多いです。

私がガネーシュ・ヒマール産のブロッカイト入り水晶と言われるものの写真を見て、ヘマタイトと判断するのは、ルチルさえも見かけない産地であるということのほかに、上に挙げた4つのポイントすべてを満たしていないことが理由です。

何を以てブロッカイトと判断したのかわかりませんが、慎重なる判断をお願いしたいものです。


2007年7月22日、ブログ掲載
写真および文章の無断転載・転用はご遠慮下さい。推測・個人的意見が混じっています。






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